<長野県立美術館>日本を代表する現代彫刻家・戸谷成雄氏の個展開催。初期から近年の30作品を展示

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日本を代表する現代彫刻家・戸谷成雄氏による個展「戸谷成雄 彫刻」が、長野県立美術館にて11月4日(金)〜2023年1月29日(日)の期間、開催する。

『森の象の窯の死』東京都現代美術館蔵 撮影:山本糾

『森の象の窯の死』東京都現代美術館蔵 撮影:山本糾

戸谷成雄氏・出身地で初となる個展開催

今回、出身地である長野県での初めてとなる同展では、戸谷氏の初期から近年の作品まで約30点を展示。「表面」や「構造」といった戸谷氏の彫刻概念の視座として、日本語の言語構造へのアプローチに目を向けてみることで、その間(あわい)から立ち現れる彫刻観を展望する。

エントランスで体感する、戸谷作品のテーマ

正面エントランスの吹き抜けの空間には、圧倒的なスケールの『雷神―09』(2009)を展示する。彫刻の表面に無数に刻まれている傷は、「視線」によって掘り出されたものが彫刻になるという戸谷氏の思考にもとづいて、交差する「視線」と、「表面・構造」との関係を表している。

『雷神—09』作家蔵 撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

『雷神—09』作家蔵 撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

第1展示室:吹き抜けの展示室

死のモニュメントとしての『森Ⅸ』(2008)、同じく死のモニュメントである墓を表す『≪境界≫からⅢ』(1995-96)、地上と地下を結ぶ『地霊Ⅲ-a』(1991)といった作品群が、『雷神―09』同様に「視線」と「表面・構造」との関係を表しながら、吹き抜けの展示室にて「死」の世界を暗示する。1階では作品の間を歩き回りながら、2階からは展示室全体を俯瞰できる。

『森Ⅸ』ベルナール・ビュフェ美術館蔵 撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

『森Ⅸ』ベルナール・ビュフェ美術館蔵 撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

第2展示室:初期作品を中心に――彫刻の起源

戸谷作品に通底する「彫刻の起源」への初期の模索を中心に紹介する。名実ともに戸谷作品の起点に位置付けられる『POMPEII‥79』(1974)は、古代都市・ポンペイに着想を得た。ポジとネガといった対概念の中間として「表面」の概念を表すとともに、他者との世界の共有と個との関係を問いかける。

また、「視線」の「構造」についての初期の模索は、時代をくだって『連句的Ⅱ』において、かたまりとしての「表面」の模索は、『視線体-積』などで繰り返されている。

『射影体』Copyright the artist Courtesy of ShugoArts

『射影体』Copyright the artist Courtesy of ShugoArts

第3展示室:モニュメンタルな作品を中心に展示

『森の象の窯の死』(1989)は、タイトルの意味そのものに言語に限定しえない空間表現が与えられ、戸谷氏の彫刻概念「表面・構造」が「言語」と結びつけられている例だ。また、『双影体Ⅱ』(2001)は、鏡像関係にある2つの直方体による「表面・構造」にあえて「間」が作られており、空間の余韻を感じさせる。

浮彫彫刻での「表面・構造」を問う展開も、スケールの大小にかかわらず、戸谷作品に通底する深い思索の存在を表している。

同展のキャッチフレーズの「ある全体として」は、戸谷氏が自身の彫刻について述べるときに頻繁に用いる言葉でもある。「ある」は「或る」や「在る」を意味しており、「大きな一つのかたまり」を意味する「全体」にかかると、矛盾をはらんだフレーズとなる。まさに戸谷氏の彫刻観の複雑さを如実に物語る言葉といえる。

年代ごとの変化も味わえる戸谷作品の全貌を探求しよう。

戸谷成雄 彫刻 ―ある全体として
期間:11月4日(金)〜2023年1月29日(日)
会場:長野県立美術館 展示室 1・2・3
所在地:長野県長野市箱清水1-4-4(善光寺東隣)
長野県立美術館公式サイト:https://nagano.art.museum/

(hachi)