未来の都市風景を変える新造船「WATERWAYSⅡ」グッドデザイン賞受賞

屋形船だけが、東京の川遊びじゃない。

■リバークルーズ船「WATERWAYSⅡ」

東京都墨田区の「東京ウォータウェイズ」のリバークルーズ船「WATERWAYSⅡ」が、2021年度グッドデザイン賞を受賞した。

世界でも有数の乗船客数を誇る隅田川のリバークルーズは、これまで不特定多数の旅客が乗り合う水上バスや屋形船などの大型船が中心であった。

しかし、周りに気兼ねなくゆったりクルーズを楽しみたい、大型船等では入れない内河川のクルーズも体験してみたいという多様なニーズを受け、長さ14m、幅3.5mの小型船を新造、広々と使えるように12人を定員とした。

東京都が進める事業の一環で隅田川に架かる橋へライトアップが施され、また、墨田区が掲げる観光プロジェクト「両国リバーセンタープロジェクト」及び「隅田公園観光回遊路の整備事業」に伴い、水辺に新たな観光スポットや船着場が整備されている。

さらにホテルに隣接した船着場から乗下船できる立地の観点から、ホテルや飲食店と連携した富裕層向けのチャータープランや、企業向けのサブスクリプション福利厚生クルージングサービスも提供していく。

■「WATERWAYSⅡ」の特長

都内に張り巡らされた運河・支流は、川幅が狭く桁の低い橋が多く船のサイズが制限されるため、通年安定して通航するには年間の潮汐状況を考慮し、極限まで全高を低くする必要があった。

そこで、船底の形状に合わせた燃料タンクや清水タンクを制作し、中心に近い床下へ格納するなど様々な工夫を施した。

その結果、船内のクリアランスも十分に確保することができ、且つ重心も低く設定できたため安定した走行性を持ち快適な乗り心地を実現することができた。

また、客室のガラスは全て強化ガラスを採用。側窓には加工が難しいとされる曲げ強化ガラスを採用することで耐久性に優れ安全性を確保しつつクリアな景色を楽しむことができる。

チャータークルージング(60分)66,000円〜

さらに船内レイアウトは変更可能で、貸切りの場合にはテーブルを中央に配置し中央に向かって着座、乗合いの場合には全てのテーブルを窓際に配置し窓に向かって着座するため乗客同士の対面も回避できる。

グッドデザイン賞の審査委員は、「WATERWAYSⅡ」の選定理由をこのように述べている。

東京湾、隅田川その支流の水辺を、もっと自由に快適に楽しみたいという思いは、かねてより多くの人が持ってきたものだろう。本作品は、小型船の機動性と大型船の居心地の良さを併せ持つクルーズ船という明確なコンセプトのもと、移動のためというよりは、観光やプライベートユースに特化し、水辺で楽しく過ごすための船を突き詰めたと言える。

船のサイズや高さ制限をタンク類を床下に格納するなどの工夫によってクリアした上で、レイアウトの自由、クリアな視界、ウォシュレットやキッチンの完備までを実現し、外装のデザインも、東京の伝統と近代の混ぜ合わさった水辺の風景と融和性のあるものとなっている。他のサービスと連携したサブスクシステムなども含め、都内の水上交通の単一性を大きく変え、未来の都市風景を変える可能性をもつデザインとして高く評価したい。

東京の川遊びのイメージを一新するクルーズ船。ラグジュアリーな体験ができそうだ。

公式サイト:https://www.tokyowaterways.com/

(冨田格)