ウィーンの文学カフェで、美味しく優雅なひとときを

オーストリアの音楽の都・ウィーンには、驚くほど多くのカフェが街中に点在している。「ザッハトルテ」で有名な「カフェ・ザッハー」や、ハプスブルク家を初めとする王侯貴族達に究極の甘味を提供してきた歴史あるカフェも多い。

そんな中で「Cafe Central(ツェントラル)」は、ウィーンの作家達が集う文学カフェだったそう。広さもあり、美味しいと評判のそのカフェを訪ねてみた。

カフェといってもコーヒーとケーキばかりでなく、朝食から夕食まで楽しめるのがウィーンの多くのスタイル。ツェントラルに着いたのは夜になってからだが、随分と多くの人で賑わっていた。

見事な柱に広い天井。壁には大きな鏡が貼られ、窓にかかるカーテンも優雅な雰囲気を醸し出している。外観からは分かりにくいが、フェルステル宮殿内にあり、内装の豪華さはまさに宮殿そのものなのだ。

とはいえ、堅苦しい雰囲気は全くない。多くの人々がビールを片手に楽しみ、豪快な料理は大きなプレートで提供される。好きなように歓談し、長居できる気持ちの良い空間がそこにあった。

オーストリアの食事を楽しみつつ、名物である「Kaiserschmarrn(カイザーシュマーレン)」を注文してみた。これはオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世お気に入りのパンケーキと言われている。酒に漬けたレーズンが入っており、一口サイズのパンケーキにアプリコットジャムや木イチゴのジャムなどが添えられて提供されるもの。

しかし一口サイズと聞いていたが、びっくりするほど量が多いので要注意。パンケーキを一口サイズにちぎってあり、自分でジャム(果肉入りソース)をかけて頂く。温かくて美味しいのだが、なかなかのボリュームに圧倒されてしまった。

モーツアルトに代表される音楽の都・ウィーンらしさを感じるのは、夕方5時から始まるピアノ演奏。これはツェントラルだけでなく、いくつかのカフェでも行われているそうで、時間帯や曜日を確認してから出掛けたい。

ツェントラルは天井が高くてピアノの音がよく響く。まさに宮殿に居るような優雅なひとときが味わえる。

人々はピアノの演奏をBGMにして、思い思いに語り、美味しい食事に舌鼓を打つ。時間を気にせず自由に過ごす貴族的な雰囲気が、ウィーンのカフェの良さなのではないだろうか。

(田原昌)