Sバーンに乗り、ミュンヘンの中心部よりも空港に近い「Freising(フライジング)」という駅で降りる。落ち着いた素朴な街中を通って小高い丘を登って行くと、景色の良い、美しい自然に囲まれた工場が見えてきた。
石の門をくぐり、敷地内を歩いてみると広々としていて花も咲き、工場と言うよりも大学のキャンパスのようだ。いかにも「工場」という雰囲気はなく、気持ち良く散歩できるような場所となっている。
しかし、この場所こそが1040年創立という1,000年近い歴史を誇る醸造所なのだ。
日本で言えば、藤原氏が栄華を誇っていた平安時代の頃になる。源平合戦などまだ先の話。そんな頃からずっと今までビールを造り続けてきているのだから感服する。
敷地内には直営のレストランがある。出来たてのビールが飲めるので是非立ち寄って頂きたい。
昼前だったのだが、もう既に酔っ払った地元客で一杯になっており、日本人は我々だけだったように思う。爺さん達がビールジョッキを片手に歓談し、愛犬を連れたご婦人が大皿料理を頬張っている。我々も負けじとビールとソーセージを注文した。
ミュンヘンを中心とする南ドイツのビールの代表は「ヴァイス」「ヴァイツェン」と呼ばれる小麦を使ったビールだ。上面発酵ビールであり、酵母によってやや白濁しているので「ヴァイス=白」と呼ばれているのである。
日本でも飲むことが出来るヴァイエンシュテファンだが、やはり出来たては全く別物だ。すっきりしていて飲みやすく、何杯でもいけてしまう。鼻から抜けてゆく香りも素晴らしい。
そしてグラスに目をやると、ライオンの紋章が誇らしげに言っている「ÄLTESTE BRAUEREI DER WELT」=世界最古の醸造所、と。
(田原昌)
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