かつてメキシコで約80年も禁断とされていた幻の酒、バカノラ。その封印が解かれ、ついにベールを脱いだ。今回ご紹介するのは、メキシコ北西部ソノラ州で生まれた「SANTO CUVISO(サント・クビソ)」と「SANTO PROHIBIDO(サント・プロイビド)」だ。
希少なアガベが生む、力強く繊細な味わい
ソノラ州はアメリカとの国境を接し、豊かな自然に恵まれた大地。その恵みを存分に受け継いだのが、ブランドオーナーであるハビエルとアナ兄妹だ。彼らは家族から受け継いだ山で育つ希少なアガベパシフィカ種を使い、バカノラ造りに情熱を注ぐ。
バカノラとはメキシコのソノラ州の特定の地域、特定のアガベ(アガベパシフィカ種)の糖のみを用い生産された蒸留酒のことを指す。テキーラやメスカルにも使われるアガベパシフィカ種は、小ぶりながら厳しい気候を乗り越え、糖度を高めた強い生命力を持つ。険しい山奥で収穫されたアガベは、車で1時間以上かけて小さな蒸留所へ運ばれる。
密造酒時代そのままに、機械は一切使わず、地面に穴を掘り、薪とアガベを積み上げて蒸し焼きにする。この時に入れる濡らしたヤシの葉が、サントクビソに爽やかなハーバル感をもたらすのだ。3日間蒸し焼きされたアガベは、人の手によって丁寧に粉砕され、木製の樽で自然発酵。銅製の蒸留器で2度蒸留を経て、琥珀色の液体へと生まれ変わる。
複雑な香りとドライな味わい、そして胡椒のような余韻
通常販売のサントクビソは、複雑なハーブ香、力強いアタック、ドライな味わいが特徴。後味にはほのかに胡椒のようなスパイシーさも感じられる。
さらに希少なのが、全世界で300本限定、日本国内では9本のみ販売される「サントプロイビド」。密造酒時代そのままに、野生のアガベを使い、伝統的な製法で作られている。そしてメキシコの伝統工芸であるバロ(土器)とタラベラ焼きで丁寧に作られたボトルは、まさに禁断の楽園の秘宝のようだ。
一口飲めば、メキシコの大地の息吹と、ハビエルとアナ兄妹の情熱が伝わってくる。伝統と革新が織りなす、深く魅惑的な味わい。幻の酒「バカノラ」は、未知のエクスペリエンスへと誘うだろう。
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(akihiro takeji)