美味しい料理は、素敵な器によってさらに映える。福岡・天神のイタリア料理店「リストランテKubotsu」では、九州各地の名門窯元の器を用いた料理が味わえる。
こだわりの九州食材で独創的な料理を生み出す料理長・窪津朋生(くぼつ ともき)氏の陶器文化へのこだわりと、同店で使用している陶器を紹介しよう。
“究極の九州料理”を目指すリストランテ
“九州の食材が奏でる唯一無二のイタリア料理”と称される「リストランテKubotsu」。料理長・ 窪津朋生氏(以下、窪津氏)の料理と食材へのこだわりは、 九州各地の生産者のもとへ自身の足で通い、手に取り、味わい、生産者の考えと取り組みに共感することから始まる。納得のいくまで徹底的に吟味した食材で、一皿一皿を表現している。
同店の料理長を務める窪津氏は、福岡県出身。 東京・代官山「リストランテASO」で研鑽を積み、2018年1月、自身の名を冠する新店「リストランテKubotsu」料理長に就任。「九州の“今”本当においしいものと美しいものを」と九州産の食材や伝統文化にこだわり、妥協のない店作りを貫く。
髙取焼宗家へパン皿の制作を依頼
有田焼、唐津焼、髙取焼、小石原焼など、九州にはさまざまな陶磁器文化が存在している。今回、窪津氏がレストランでパンの提供時に使用する新しい皿の制作を依頼したのは、福岡で420年続く初代 髙取八山(たかとり はちざん)唯一直系の窯「髙取焼宗家」の髙取春慶(しゅんけい)氏だ。
こだわりのパン皿
福岡県朝倉郡東峰村の静かな山間に、同窯元はある。その土地の空気や春慶氏との会話に、さまざまなインスピレーションを受けた窪津氏は、思い描く新たなパン皿のイメージを春慶氏に伝えた。
同窯元の土は、やや鉄分を含んだ「小石原」で採れる土と、福岡市の七隈で採れる白土を原料としている。2種類の土を独自に調合し、伝統技法によって一から制作した陶土を焼成すると、キメが細かく、薄くて軽い磁器に近い美しい陶器となる。
同窯元秘伝の釉薬(ゆうやく)の原料は、自然界から得られる「藁灰」「木灰」「サビ」「長石」の4種。その調合方法は「秘伝書」に記され、まさに門外不出とされている。一皿一皿がそれぞれの表情を持ちながら、統一された世界観を醸し出す。これが同窯元の伝統と技による奥義ともいえる。
昨年12月にパン皿が完成し、同店に新たに加わった。
九州各地の陶芸家による器の数々
同店には、ほかにも九州各地の伝統工芸から生まれた器や装飾品を揃えている。ここでは、窪津氏が厳選した器の一部を紹介しよう。
唐津焼
同店を訪れると、まずテーブルにセットされている大皿は、オープン時に唐津焼の十四代 中里太郎右衛門氏に作陶してもらったもの。
同じく、唐津焼の中でも人気の高い隆太窯の中里太亀氏の皿や、中里花子氏のパン皿も使用。
唐津焼の第4世代の最も注目される若手作家といわれている、矢野直人氏による平皿とバターを入れる器にも注目したい。
有田焼
現代的で静観な佇まいのこの皿は、有田焼の窯元「文山窯」のもの。
そして、ブルーの発色が印象的なこの皿は「やま平窯」のもの。特殊な技法により、海の底から水面を見上げたようなキラキラした表情を器の中に閉じ込めている。
インスピレーションを刺激するような器を、料理とともに堪能しよう。
リストランテKubotsu
所在地:福岡県福岡市中央区天神2-5-55 レソラ天神 4F
公式サイト:https://www.hiramatsurestaurant.jp/kubotsu
(田原昌)