世界の建築様式の粋を集めた「本願寺伝道院」。建築家・藤森照信氏の講演会と内部の特別公開を実施

「本願寺(西本願寺)」は、本願寺文化財の保存・継承の普及・啓発を推進するため、12月3日(土)に、「本願寺伝道院」にて講演会と特別公開を開催する。

当日に講演会を行うのは、建築家としても著名な東京大学名誉教授・藤森照信氏で、講題は「伊東忠太の思想と建築」。併せて、通常は非公開の内部を特別に案内する。

本願寺伝道院の建築まつわる講演と特別公開

本願寺伝道院は1912年、親鸞聖人650回大遠忌を記念して、本願寺第22代門主・大谷光瑞の依頼により、当時の東京帝国大学教授・伊東忠太が設計し、「真宗信徒生命保険株式会社」社屋として建てられた。

明治時代から大正時代にかけてのルネッサンス様式やゴシック様式といった欧米の技術の模倣が主流であった時代に、東洋を感じさせる先駆的とも言える、日本の近代建築を知るうえでも貴重な建物とされる。

イギリスの建物をイメージした総レンガ造り風のタイル張りの外観、インド・サラセン風のドーム、さらにはイスラム・日本など、さまざまな建築様式を取り入れる。

また、屋根は銅板葺き、屋根骨組みは木造、屋根の装飾には一見石に見えるテラコッタ (装飾用の陶器)を用いる。羽をもった象などユーモラスな架空の珍獣が回りの石柵に配されているのも特徴的。内部は、和風意匠の天井にアール・ヌーボーを意識した照明器具が取り付けられている。

本願寺伝道院は、2014年に国の重要文化財に指定され、現在は僧侶の伝道布教の学びの場になっている。

講演会を行う藤森照信氏は、東京大学名誉教授のほか、工学院大学特任教授・東京都江戸東京博物館館長を務める。建築家として、神長官守矢史料館・近江八幡ラ・コリーナ草屋根・多治見市モザイクタイルミュージアムなどの作品があり、近年は世界各地にフリースタイルの茶室を制作する。

また、『日本の近代建築 上・下』(岩波書店)、『建築探偵の冒険 東京篇』(筑摩書房)、『丹下健三』(新建築)などの著書も多数上梓する。

日本の近代建築の貴重な建物「本願寺伝道院」。その建築にまつわる専門家の講演会と通常では見ることのできない貴重な内部の特別公開。建築ファンならずとも、見逃せない1日になりそうだ。

本願寺伝道院の特別公開・藤森照信氏講演「伊東忠太の思想と建築」
会場:本願寺伝道院
所在地:京都府京都市下京区玉本町196
会期:12月3日(土)
参加費:1,000円以上(文化財保護の寄付として)※記念品進呈
時間:講演会 10時30分~11時30分・見学会 11時30分~12時30分
定員:先着70名
申し込み(本願寺公式サイト): https://www.hongwanji.kyoto/topics/001183.html

(高野晃彰)