スペイン内戦や第二次世界大戦などの激戦模様をカメラにおさめ、40歳のときに戦場で命を落とした20世紀の報道写真家、ロバート・キャパ。
神戸ファッション美術館にて、同氏の作品を約100点展示する特別展「もうひとつの顔 ロバート・キャパ セレクト展」が、9月10日(土)より開催される。
戦争報道写真の傑作だけでなく、親交のあった著名人の飾らない表情を切り取った作品なども見られる写真展だ。
「崩れ落ちる兵士」で世に知られた報道写真家
ロバート・キャパはハンガリーに生まれ、1930年代から写真家として活動を始めた。パートナーであった女性写真家ゲルダ・タローとともにスペイン内戦を撮影し、兵士が撃たれた瞬間をとらえた「崩れ落ちる兵士」で世に知られる存在となった。
1954年に来日し、東京・大阪・奈良などで人々を撮影。その直後、第一次インドシナ戦争を取材中に地雷を踏み、わずか40年の生涯を終えた。
ふたたび緊迫する世界を前に、激動の世紀を駆け抜けたキャパの写真は我々の心を打つ。
キャパの「もうひとつの顔」、素顔に迫る特別展
キャパは戦時下の市民の姿をカメラに多数おさめた。たとえば不安げに空を見上げる人々、途方に暮れて佇む人など、戦争が日常化した世界に生きる人たちの姿を多面的に捉えようとする意識が、写真からうかがえる。
キャパは戦時下に人が見せる鮮烈な感情と向き合うことで、「人間」という存在そのものに迫る挑戦をしていたのかもしれない。
同展では、東京富士美術館所有のコレクションの中から選び出した約100点の作品を展示。キャパの「もうひとつの顔」である多面性のある「編集的視点」を会場内に構成する。
前半は戦争報道写真の傑作を展示
前半の展示構成は、同氏の戦争報道写真の傑作を展示。もっとも有名な「崩れ落ちる兵士」を筆頭に、空襲や避難生活など、甚大な被害をもたらした“20世紀の戦争”に翻弄された市民たちの様子を鋭く切り取った写真を集める。
戦争状態を多面的に捉えた、ロバート・キャパの報道写真家としての姿勢に刮目したい。
後半は戦争以外の写真や写真集などを展示
後半では、戦争と強く結びついたキャパのイメージから離れ、雑誌『ライフ』のために撮影されたアメリカの日常、ヘミングウェイやピカソなど、親交のあった著名人たちを撮影した写真などを展示。
また日本と旧ソ連で撮影された写真も特集。さらにキャパが編集・刊行した写真集も展示し、ジャーナリストとしての側面にスポットを当てる。あらゆる角度からロバート・キャパの仕事を覗ける、またとない展示内容だ。
本記事の最後に、死の間際まで世界中を駆け回り、報道写真家として人々に向き合ったロバート・キャパの名言を紹介しよう。
“戦場カメラマンの一番の願いは失業することなんだ”
もうひとつの顔 ロバート・キャパ セレクト展
会場:神戸ファッション美術館
所在地:神戸市東灘区向洋町中2-9-1
開催期間:9月10日(土)~ 11月6日(日)
休館日:月曜日、9月20日(火)、10月11日(火)
※9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館
※新型コロナウイルスの影響で変更の場合あり
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
観覧料:一般1,000円
(すずきあゆみ)