日本の伝統文化を後世に引き継ぐプロジェクトの一環として、能楽をVRで体験するデモンストレーションが、5月29日(日)に国立能楽堂で行われた觀ノ会 第五回公演「道成寺」にて披露された。
同公演では360度映像のカメラ撮影を行っており、その映像が7月1日(金)からWEBサイト「友枝家の能」にて、1ヶ月の期間限定で公開中だ。
映像を通して日本の伝統文化「能」を未来へ届けたい
今回、能楽公演をプロデュースする「觀ノ会」は、能楽の未来へのプロジェクトとしての360度撮影のアーカイブ作りに賛同。能楽師 友枝雄人(ともえだ たけひと)師がシテ(=主役)を勤めた「道成寺」の360度映像撮影にも協力している。
誰でもどこでも鑑賞できる。能の舞台を360度で堪能
同作品は、能楽師のシテ(=主役)が、生涯に数回しか舞うことがないといわれる「道成寺」の舞台脇に、360度カメラを設置して撮影した。
また、同作品をVRゴーグルで視聴すると、目の前に国立能楽堂の舞台が広がり、臨場感ある公演が満喫できる。
ユネスコの無形文化遺産に登録されながらも、普段はなかなか接することができない日本の伝統芸能である「能」。同プロジェクトは、演者だけでなく、次世代の観客も育成することにより、日本文化への幅広い理解を促進していくことを目的に、新しいデジタル体験の未来や記録を作る挑戦としてスタートした。
今回の取り組みでは、ART360(ART THREE SIXTY)など、アートとデジタルを融合させたDXプロジェクトを数多く手掛けるActual Inc.が技術協力をしており。同社の撮影技術と文化アーカイブ作りのノウハウを、能楽の本公演とマッチングした。また、取り組みは喜多流のシテ方・友枝師の賛同と支援のもとに実現したという。
能をはじめとする日本の伝統芸能に普段はなかなか触れる機会がない人にも、興味を持ってもらうきっかけになるかもしれない。
觀ノ会 シテ“能楽師・友枝 雄人師”
シテの友枝師は、1967年に東京で生まれ、慶應義塾大学経済学部を卒業。故友枝喜久夫さんの孫であり、伯父・友枝昭世氏の養子となる。喜多流十五世宗家 故・喜多実に入門し、友枝昭世氏に師事した。
1970年 初舞台「鞍馬天狗」花見、1977年「経政」にて初シテを勤める。その後、1994年「猩々乱」、2002年「道成寺」、2005年「石橋(赤獅子)」2010年「翁」、2013年「望月」、2021年「石橋(一人獅子)」を披く。現在は「五蘊会」にて主宰を務めており、2009年には小学館白洲賞を受賞している。
今回のプロジェクトは、現在の観客だけなく、未来の観客、能楽師、研究家にとって、大切な資産となる記録になるだろう。
友枝家の能 公式WEBサイト:https://tomoeda-kai.com/
(田原昌)