「清酒にもっと親しんでもらいたい」「城下町を盛り上げたい」という思いから、コロナ禍で立ち上がった酒蔵がある。郡山城下町に、日本初の醸造体験ができる「清酒マイクロブルワリ―&清酒バー」の開設を決めた中谷酒造だ。
奈良・大和郡山に「柳町醸造所」を新設
体験醸造が可能な醸造場
大和郡山市は2020年12月、構造改革特別区域法に基づく清酒製造体験特区の認定を受けた。これを承けて中谷酒造は、現在の醸造場とは別に体験醸造が可能な新規醸造場「柳町(やなぎまち)醸造所」を設置することが可能になった。
柳町醸造所は郡山城下町の中心エリア・柳2丁目に建設中。大阪難波から45分、京都から47分の近鉄郡山駅が最寄りだ。同駅から東に200メートル、市役所から南に100メートルの場所に位置する。
電車で来所し、清酒を飲んで電車で帰れる場所ということが大きな特色。二階建ての商家を思わせる外観、酒造りの道具が置かれた吹き抜けのある玄関、奥に庭を配す。
同醸造所には清酒バーを併設
数十リットルという小さな単位で醸造を行い、毎日のように仕込作業を行い、20日程度の発酵期間を経て毎日のように新酒を搾る。これにより、一般に流通することのない水準の、発酵中に生じた炭酸ガスが口の中で弾けるような鮮度の高い清酒を、酒蔵の中で手軽な価格で楽しめる。
酒のアテは提供せず、城下町の店舗からのデリバリーか持ち込みとする。これにより城下町商店街を盛り上げたいという思いもある。醸造体験は、洗米、蒸米、放冷、仕込まで。半日程度の時間割とし、蒸米の間に城下町散策、仕込後は醸造場での有償試飲を組み込む。
以上を実現するにあたり、クラウドファンディングにて、従来の醸造場で造られた上級酒在庫の応援購入を開始する。開始時期は2月下旬を予定している。気になる人は中谷酒造の公式LINEをフォローしよう。
醸造所建設で清酒と町を盛り上げる
「新しい清酒ファンをつくりたい」という思い
清酒の国内消費量の減少は加速しており、50歳以下の世代の酒類消費量に占める清酒の割合は2%台に過ぎない。料理屋、割烹といった和食店や和食を中心に据えた居酒屋は激減。家庭では米も日本食もあまり食べず、食中酒としての清酒の居場所がなくなった。更にコロナ禍が加わり清酒の出荷量は激減した。
コロナ禍は早晩終わる。何とか日本民族の酒である清酒を残せないか考えたところ、清酒に親しめる場所が身近にあることが新しい清酒ファンを作る近道と考え、柳町醸造所建設に思い至った。
染物体験や金魚すくいも楽しめるエリア
一方、地方都市は人口減で疲弊しており、その活性化の中核施設として貢献できることも背中を押してくれた。大和郡山はかつて大和・和泉・紀伊三カ国百万石を治めた城下町で、一定の観光客もある。
金魚の養殖が盛んで、全国金魚すくい選手権大会を開催している。柳町醸造所は、染物体験ができる「箱本館」や金魚すくいができる「こちくや」がある紺屋町のそばに位置し、城下町観光の黄金ルートにあるという好立地だ。
清酒を身近に感じてもらうため、そして城下町を盛り上げるために始動する柳町醸造所を応援したい。
柳町醸造所詳細:http://www.sake-asaka.co.jp/nakatani_LP/
中谷酒造:http://www.sake-asaka.co.jp/
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(田原昌)