特に欲しいものがないときでも、文具店を覗いて見るのは楽しいもの。毎日の生活で、特に注目することもなく当たり前に使っているステーショナリーが、実は豊かなデザインが溢れているということに気づけるからだ。
コクヨ株式会社は、働く・学ぶ・暮らすシーンで新しい価値を生み出すプロダクトデザインを集めて商品化を目指すコンペティション「コクヨデザインアワード2020」(作品応募期間:2019年7月19日~10月18日)を開催。国内外55か国から応募された合計1,377点(国内:771点、海外:606点)を審査した結果、受賞作品計 4作品を決定した。
◾︎コクヨデザインアワードとは
一般から作品を募集して商品化を目指すプロダクトデザインのコンペティションとして、ユーザー視点のものづくりの推進を目的に掲げ、2002年に創設。審査員には国内外で活躍するトップクラスのクリエイターを迎え、近年は海外からの応募者が半数近くを占めるなど、国際的なコンペティションとして発展している。
受賞作品の商品化にも力を入れており、今までに18作品の商品化を実現。商品化されたアイテムの中には、MoMAのパーマネントコレクションに認定された「カドケシ」や、国際的な広告やデザインの賞を多数受賞した「なまえのないえのぐ」、iF Design Awardを受賞した「本当の定規」などがある。
特に近年はストーリーやシーンを丁寧に提案できていることを重視してきたが、今回は応募者の創造性やインスピレーションの解放を促すことを第一に考え、『♡』というテーマを設定。あえて『♡』の読み方は設定せず、『♡』という記号をどのように読み、解釈するかを応募者に委ねることで、驚きのある、直感的に心を動かすような魅力やパワーを持った作品が集まることを期待した。
本年のグランプリおよび各賞の受賞作品は、次の通り。
◾︎グランプリ(1作品)
作品名:いつか、どこかで
一般名称:鉛筆
グループ名(受賞者):オバケ(友田菜月、三浦麻衣)
作品概要:これは、前世を持つ鉛筆。この世から消えてしまうはずだった、廃材によって作られます。側面に書かれた住所と部材名は、この木が使われていたかつての建物や家具の場所。凹凸のある質感や硬さ、ほのかな香り、キズ、日焼けの跡、塗料の色、木目…手にした途端、1本1本ちがった豊かな表情に出会えるはずです。この木だけが知る記憶が、鉛筆に移植され残り続けていく。今じゃないいつか、ここじゃないどこかを、心に描いてみてください。
◾︎優秀賞(3作品)
作品名:オルゴールテープカッター
一般名称:テープカッター
受賞者:鳥山 翔太、柳澤 駿
作品概要:マスキングテープカッターにオルゴールの要素を加え、テープを引き出す動作に連動して綺麗な音色が流れるようにしました。テープを引き出す際に鳴る音は、感覚的にテープの長さを測る事も出来るので、使ううちに丁度いい長さでカット出来たり、いい事があった日、お気に入りのテープをセットした時は、いつもより長く音を楽しんだり。目と耳で感覚的にテープを使う事を楽しむ事が出来る提案です。
作品名:オヤコゴコロ
一般名称:位置情報付き緊急SOS発信機(ワンタイムPLB)
受賞者:山川 洋平
作品概要:本体を強く押した瞬間から電池が切れるまで、現在地とSOSメッセージを一定間隔で送信し続けるブローチ型IoTデバイスです。何かあった時のために、子供の居場所を把握しておきたい「オヤゴコロ」と、常に居場所を把握されていることに抵抗を持ってしまう「コドモゴコロ」。でも、本当に何かあった時には、こっそり助けを求めたい。求めてほしい。そんな「オヤコゴコロ」に応えたいと考えました。
作品名:FROM TREE TO FOREST
一般名称:鉛筆
受賞者:Tuncay Ince
作品概要:木と人間、森と社会の関係を意識したデザインで、見た目も楽しく機能的な文房具です。鉛筆部分は木の幹を付箋部分は木の枝を表し、鉛筆を立てて並べると付箋同士が支えあい、森のように見えます。付箋を使い鉛筆を削る行為を、木の伐採や森林破壊に見立てています。近年、世界中で行われる森林破壊に対策しなければ、自分たちを破滅に導くかもしれません。この作品は、この現状を感じてもらい、自然を尊重し大切にするよう促します。
私たちの生活を、ちょっと心豊かにしてくれそうなプロダクトデザインたちが選ばれた。今年の受賞作から商品化されるものも出てくるかもしれない。そのうち、文具店で直接出会うチャンスもありそうだ。
コクヨデザインアワード
ホームページ:https://www.kokuyo.co.jp/award/
Facebook:https://www.facebook.com/KokuyoDesignAward.japan/
(冨田格)