米国人ジャーナリスト マヤ・ムーア氏が、東日本大震災の陰で起きた「双葉ばら園」の悲劇を、美しいバラの写真と共に綴ったフォトエッセイ『The Rose Garden of Fukushima 失われた福島のバラ園』が世界文化社から発売中だ。
この本の舞台となる「双葉ばら園」。福島県双葉町にあり、放射能汚染で充満している地域のほぼ中心にある。海から8㎞のところにあったバラ園は、津波の被害からは逃れられても、目に見えぬ猛毒の放射能汚染からは、免れることができなかったのだ。
■「福島には世界に誇れる、素晴らしいバラ園があった」
広大な敷地に750 種類のバラが咲き誇り、年間5 万人の来園者に愛された福島県「双葉ばら園」。本書には、かつての瑞々しい美しさを伝える写真、2011年3 月11日以降その姿を変えてしまった花園の写真と共に、「双葉ばら園」園主の岡田勝秀さんの開園から3.11、そして今に至る物語が綴られている。
著者のマヤ・ムーア氏は「双葉ばら園」の写真展をテレビで知ったとき、「この話を世界に伝えたい!」「福島県で失われたばら園の物語は、国境を超え、人種を超え、さまざまな感情を共有できると直感した」と語る。
■失われた「双葉ばら園」
ほぼ50年にも及んで愛情こめて育て上げた「双葉ばら園」は、3月のあの悲劇の日以来、突然、その存在価値を奪われたのでした。本書で書き綴られた話は、東日本大震災と原発事故から生じた幾多の悲劇の一例ですが、人々の心奥にある、決して消えないものを見つめ直す希望の物語でもある。(本文「はじめに」より)
■脚本家・倉本 聰氏による序文「バラ、今何を想う」
日本を代表する脚本家・倉本 聰氏も、マヤ・ムーア氏の想いに共鳴した人のひとり。『The Rose Garden of Fukushima 失われた福島のバラ園』の序文に、倉本 聰氏の「バラ、今何想う」という文章が寄稿されている。「ある夜荒廃したバラ園の跡地で辛うじて生き残り花をつけた一輪のバラが、月光の中で周囲を見廻す。かつて世話してくれた人間たちの姿はこの界隈から消えてしまった。もう何年も人の影を見ない。(中略)ボクは一体どうしたら良いのだろう。(一部抜粋)」3.11を境に人間たちに見向きもされなくなってしまった「双葉ばら園」のバラ達の悲しみを代弁する序文は、東日本大震災の出来事を改めて深く考えさせられる。
【書籍概要】
『The Rose Garden of Fukushima 失われた福島のバラ園』
著者:マヤ・ムーア
写真監修:松田久子
日本語監修:水上洋子
定価:本体2,800円+税
発行:株式会社世界文化社
https://www.amazon.co.jp/dp/441820203X/