歴史的な価値を持つ茶室2棟も含めたスペースを、京都の人気カフェ・茂庵がレンタルサービスを開始

京都市左京区の吉田山にある「茂庵」は、京都の不動産業者・八清との協業で、5月よりレンタルスペースとしての営業を開始した。

これは「茂庵」の歴史ある貴重な文化的建物と、自然あふれる吉田山を守るための継承事業。京都という都市の、文化的な価値を守るためにも必要なものとして応援したい。

茂庵の歴史と存続のために直面した問題

「茂庵」は、京都の街中に位置しながら、都会の喧騒から離れ、緑に囲まれた非日常感が味わえると評判の人気カフェだ。

一昨年11月に一度クローズしたものの、体制を整え昨年1月に再開した。ただ、その立地特性から繁忙期と閑散期の売上げの差が大きく、閑散期の売上げ確保が課題となっていた。

数寄者であった谷川茂次郎氏が、大正時代に建築したという歴史をもち、国登録有形文化財にも指定されている。同氏は、幕末に京都の八瀬大原に生まれ、大阪で新聞用紙の運輸事業で成功をおさめた人物。裏千家に入門して、本格的な数寄者となった。

茶道をこよなく愛した谷川氏は、吉田山の東側一帯を購入し、茂庵庭園を造る。現存する茶室は、静閑亭と田舎席の2棟だが、最盛期には8棟の茶室と月見台・楼閣もあったといい、数棟の待合が現在も残っている。当時は大規模な茶会も開かれ、その様子が写真にも残されている。

同氏の死後は、母屋をカフェとして活用し、いつも賑わう京都にあって喧騒から離れることができる人気スポットと親しまれている。

様々な活用ができそうな魅力的な立地と建物をもつ「茂庵」だが、市街化調整区域であることがわかり、新しい事業用途では利用できないことが判明。これまで続けてきたカフェの営業を継続することは可能だが、運営企業の変更や、新しい業態での事業は不可だという結論に至った。

貴重な場所を守るためにスペースレンタルを募集

茂庵を訪れると、いかに贅を尽くして建てられた建物であることが良く分かるだろう。京町家でもなく、農家古民家でもない、独特で貴重な建物だ。また、木々の間から京都の街並みを眺めることができ、ここが特別な場所であることを実感できる。

しかし、この山の整備や建物を維持していくためには、多大な費用がかかる。茂庵自身でその費用を稼げるサイクルを早急に組立てなければ、維持管理が難しくなることから、今回、カフェの延長として空いている茶室2棟も含めたスペースを、レンタルすることになったという。

吉田山は、標高102mの孤立丘。丘陵一帯は吉田神社の境内で、神楽岡の名で親しまれ歴史的にも重要な場所だ。

「茂庵」を所有する谷川家は、これらを守り、継承していきたいという希望を強く持ち、その想いに対して八清が模索したことがスペースレンタルという決断だった。

「茂庵」の貴重な文化的建物と、自然あふれる吉田山を守ることは、京都という都市の価値を守ることだ。この計画が軌道に乗ることを願ってやまない。

茂庵 レンタルスペース入居募集
所在地:京都市左京区吉田神楽岡町8
八清公式サイト:https://www.hachise.jp/rent/moan/
茂庵公式サイト:https://www.mo-an.com/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000040189.html

(高野晃彰)