劇団文化座公演163『炎の人』の、東京・俳優座劇場での上演が決定した。公演期間は2023年1月11日(水)から1月18日(水)までで、チケットはカンフェティで12月5日(月)より販売開始予定だ。
文化座が描く若き日のゴッホを鑑賞しよう。
劇作家・三好十郎さんの代表作と謳われる『炎の人』
劇団文化座は、戦時下の1942年2月に演出家・佐佐木隆さん、女優・鈴木光枝さんをはじめとする9人のメンバーによって結成。旧満州にて敗戦を経験した苦難から一貫して、働く人たちの応援歌とも言える、常に社会的な弱者の気持ちに寄り添い、生活者の「視点」を持った作品を創造してきた。
劇作家・三好十郎さんは、時代と社会と人間の真実を自分自身の中に真摯に問い続け、多くの名戯曲を生み出している。
中でも『炎の人』は代表作と謳われ、文化座では1958年に佐佐木さん演出で初演。生前はまったく無名であった若き芸術家の無垢な魂と、彼を支え、人生の伴走者となった人々を丁寧に描き出した。文化座の描くゴッホはあくまでも若くて未熟で、孤独だという。
劇団文化座公演163『炎の人』は若き日のゴッホを描く
ベルギーの貧しい炭鉱町で、福音伝道者として坑夫たちと生活を共にしていたヴィンセント・ヴァン・ゴッホだったが、坑夫たちのストライキに加担したとして伝道協会の派遣牧師から職を解かれてしまう。
職を失い画家になる決心を固めたゴッホは、オランダの主都ハーグに移り、モデルで娼婦のシィヌと出会い同棲を始めたが、絵の師でもあるモーヴはその結婚に反対し絶縁を宣告。シィヌにも去られてしまったゴッホを慰めるのは唯一の理解者であった弟のテオだけだった。
画商であったテオの口添えでパリに移り住んだゴッホは、印象派の若き画家たち、ロートレック、ベルナール、シニャックらとタンギイの店で交際を深め、中でもゴーガンに深い尊敬と憧れを抱いた。
これまでにない新たな色彩と光の表現に、絵の難しさを知り苦悩するゴッホは疲労と神経の浪費を重ね、都会を離れて南フランスのアルルに一人移る。大自然の中、とりつかれた様に作品を次々と生み出してゆくゴッホは、待ち望んだゴーガンとの共同生活を始める。しかし、心では尊敬し合いながらも衝突する二人。
ある日、ゴッホは、愛する酒場のラシェルがゴーガンの膝の上にいるのを目撃する。恋人、絵、酒、文明、神、道徳、そして……錯乱。論争と反目を繰り返してきた友ゴーガンは静かに部屋を出ていってしまう。ゴッホは自省と狂気の中で、自身の耳にカミソリをあてるのだった……。
ヴィセント・ヴァン・ゴッホを演じるのは、藤原章寛氏、ポール・ゴーガン役は白幡大介氏。若きゴッホと文化座俳優陣による充実したアンサンブルと、鵜山仁氏の卓越した演出に期待が募る。
チケット料金は全席指定5,500円だが、カンフェティ会員であれば4,500円で購入できる。
コロナ禍の下、感染予防に努めながら、2020年8月に金城一紀原作「フライ,ダディ,フライ」、2021年1月に音楽劇「ハンナのかばん」、2021年4月に竹山道雄原作「ビルマの竪琴」、10月にはリリアン・ヘルマン作「子供の時間」と、意欲的に作品を創り続けることで、文化芸術の灯を守り続けている劇団文化座に注目したい。
劇団文化座 公式Webサイト:http://www.bunkaza.com/
カンフェティ(12月5日(月)より):https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=69278&
(MK)
※価格はすべて税込