「新版画」を世に送った渡邊庄三郎氏の挑戦の軌跡をたどりながら、モダンな精神に彩られた瑞々しい表現の魅力を紹介。神奈川県の茅ヶ崎市美術館では11月6日(日)まで、企画展「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」を開催している。
茅ヶ崎市美術館で「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」を開催
江戸時代に確立された浮世絵木版画は、明治以降の西洋の写真や印刷技術導入の影響で、衰退の一途をたどっていた。
その中で、あえて伝統的な絵師、彫師、摺師による分業体制の浮世絵木版画技術を使い、高い芸術性を意識した同時代の画家による取り組みが、「新版画」の始まりとされている。これを牽引したのが渡邊版画店(現在の渡邊木版美術画舗)・渡邊庄三郎であった。
渡邊庄三郎は17歳で浮世絵商・小林文七の輸出の出店に勤めた。そこで出会った浮世絵の、とりわけバレンで摺る木版画特有の美しさに魅了され、木版画の復興と新しい木版画制作を志す。
その後独立し、明治42年に東京・京橋に渡邊版画店を構え、浮世絵研究と販売を行うかたわら、大正4年から、来日した外国人画家の作品の版画化を試み、鏑木清方門下生を中心とした新進気鋭の画家たちを絵師に起用する。
絵師、彫師、摺師の協業のもと、高品質な材料を用い、それまでにない複雑かつ華麗な彩色に「ざら摺り」など手摺りならではの技法を駆使するなど、庄三郎の創意工夫と優れた審美眼に支えられた新たな「浮世絵木版画」を世に送り、昭和の初めに国内外で巻き起こる“新版画ブーム”の火付け役となった。
モダンな精神に彩られた作品の数々
展覧会では、その「新版画」の精神を今もなお受け継ぐ渡邊木版美術画舗の全面的な協力のもと、残存数が少ない貴重な初摺の渡邊版をとおして、渡邊庄三郎の挑戦の軌跡をたどりながらモダンな精神に彩られた瑞々しい表現の魅力を紹介する。
芸術の秋は、渡邊庄三郎の世界観に浸ってみては。
THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦
会期:2022年9月10日(土)〜11月6日(日)
※10月12日より一部作品の入れ替えを行う
会場:茅ヶ崎市美術館 展示室1・2・3
所在地:神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
休館日:月曜日(ただし9月19日、10月10日は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
開館時間:10時-17時(入館は16時30分まで)
観覧料:一般800円(700円)、大学生600円(500円)、市内在住65歳以上400円(300円)
※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料 ※( )内は20名以上の団体料金。
公式WEBページ:https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/6861/
(IKKI)