前代未聞の規模、900戸を超える神戸市のマンモス団地「ポートアイランド住宅」が耐震改修を実施する。
■神戸のマンモス団地「ポートアイランド住宅」想いをひとつに耐震改修実現
神戸市では国の法改正に先駆けて、「神戸市マンションの管理状況の届出・情報開示制度」を2021年3月にスタート。今回、ポートアイランド住宅が補助制度を活用し、全国最大規模の耐震改修を2022年より実施することが決まった。
■適正な管理運営に支障をきたす管理組合が表面化
全国に約675万戸あるとされるマンション。中でも築40年を超えるマンションは、現在の103万戸から10年後には232万戸、20年後には405万戸になるなど、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年のマンションが急増し、適正な管理運営に支障をきたす管理組合が表面化してくることが危惧されている。
神戸市にも約20万戸のマンションがあり、築35年以上のマンションはすでに3割を超えている。マンションは様々な価値観や事情を抱える複数の区分所有者が共同で生活をするスタイルで、適正な管理を行うための意思決定は、都度合意形成が必要になってくる。
ただでさえ多様な価値観をまとめる必要性がある中で、マンション自体の経年に加え、区分所有者の高齢化や非居住化などが進行、管理組合役員の担い手不足や修繕積立金の不足等により、組合運営が困難になりうる課題は山積の状況だ。
国はマンションの管理適正化を一層推進するため、令和2年にマンションの管理の適正化の推進に関する法律を一部改正し、行政も更なるマンションの管理適正化に向けた取り組みを行うこととなった。
■ポートアイランド住宅管理組合の強い意志
「神戸市マンションの管理状況の届出・情報開示制度」の受付開始直後に届出を提出した管理組合の1つに、ポートアイランド住宅管理組合(全9棟941戸)がある。
この管理組合は、以前から「マンションの資産価値の維持向上」を念頭に置き、適切な修繕等に加え、防災用品の備蓄促進や震災対策としての家具固定推進、近隣大学との総合防災訓練など様々な取り組みを進めてきた。
ポートアイランド住宅が、耐震化に向けて動き始めたのは2009年。神戸市の補助制度を活用して耐震精密診断を実施し、耐震性が不十分であることが明らかになった。そこで耐震補強設計を実施し、耐震改修工事を行う予定だった。しかし、工事業者を公募していた2011年3月11日に東日本大震災が発生したことで見積を辞退する業者が続出、見積価格も高騰したため工事はやむなく中止となった。
それから10年間、ポートアイランド住宅は、防災意識を高く持ち続け耐震改修に取り組むという強い意志のもと、再度耐震改修の資金を確保するためにマンション管理の経費削減に積極的に取り組み、住民の合意形成にも尽力した。また、補助制度を活用するため、神戸市とも協議を続けてきた。
工事を実施するのは、全9棟941戸のうち、耐震性が不十分と診断された7棟727戸。耐震改修工事は3年計画で、2024年に完了予定だ。
耐震化に向けて、先頭に立ち取り組みを進めてきた、同管理組合計画修繕委員会委員長の髙柳章二氏は「耐震性が不十分な旧耐震基準のマンションは、今後生き残っていけない。住民が安全に暮らすため、また、資産価値を上げるため、耐震改修をすることが不可欠であるという想いで進めてきた。」と話す。
全国でも類を見ない熱意と規模でマンションの管理適正化に先駆的に取り組む姿は、全国の管理組合の手本や参考になる部分も多いだろう。
一昔前から「マンションは『管理』を買え」と言われてきた。今後の老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化はまさに差し迫った課題だ。
神戸市:https://www.city.kobe.lg.jp/
(冨田格)