目黒をぶらり!江戸の頃から賑わった「目黒不動」を訪ねて

「江戸名所図絵」など、多くの浮世絵の題材として描かれてきた「目黒不動尊」。「お不動さん」と呼ばれて江戸の頃から人気のこの寺を中心に、目黒をぶらりと訪ね歩いてみた。

東急目黒線の「不動前」駅から歩き始め、やがて坂道に着く。高台からぐっと下に向かって降りていくこの坂道が門前道になる。

その坂道の終わりに見えてくるのが、見事な朱色の山門。目黒不動の正式名称は「目黒不動尊 瀧泉寺」である。

さて、目黒不動の本堂は「江戸名所図絵」にも描かれていたように、階段の上にある。

左手には見事な銀杏の木、そして正面の階段は急であることから「男坂」、右手にはやや緩めの階段になっている「女坂」となっていた(混雑時は上り下りに分けているので注意)。

今回はもう師走ということで初詣の準備が進んでいたのだが、確かにこの目黒不動は大晦日と初詣で大賑わいになるだろうと思う。

階段の手前には「水かけ不動」があるので、そこでお願い事をしていくのもお忘れなく。

こんこんと流れ出る「独鈷の瀧」は、この寺の名前と関係があるのだろうか。とても水の豊かな場所である。

階段を上がったところにあるのが大本堂。丑、寅、卯、辰、巳、酉歳の人たちの守本尊だそう。

本堂でお参りをしたら、裏手に回ってみよう。驚いたことに、外に大日如来の像が座っている。

元々はちゃんとお堂の中に納められていたらしいが、現在は木々に囲まれた空間となっていて、日の光が当たって美しく輝く。これはこれで極楽浄土を思わせるような、神々しい姿だ。

ここから境内を出て、ちょっとした史跡を訪ねてみることにした。

目黒の街を見下ろす高台に、青木昆陽(あおき こんよう)のお墓がある。青木昆陽といえば「甘藷先生」と言われた、サツマイモ栽培を普及させた江戸時代の学者である。荒地にサツマイモを栽培することで人々の飢えを防ぎ、飢饉に備えたのだそうだ。人々の命を救ったその情熱に、敬意を評したい。

目黒不動尊の脇には「五百羅漢寺」があり、その隣には茶屋がある。お寺に詣でれば帰りは茶屋で一休み、というのは江戸の頃から変わらない。

ここでは、果物とアイスクリームがどっさりのった「クリームあんみつ」がオススメ。蜜が白蜜と黒蜜の両方があって、江戸っ子のこだわりを感じてしまう。これひとつでお腹いっぱいだ。

ここからは目黒川を越え、権之助坂を登って目黒駅を目指す。途中、坂の上から振り返ると、建物の間から富士山が見えた。「富士見坂」と江戸時代には言われて、茶屋があったほど景色の良い場所だったらしい。

昔の人のように富士山を見て、すっきりとした気分で目黒駅に到着。歴史を感じることができる、ショートトリップだった。

(田原昌)