北海道・函館の「五稜郭」は誰もが知っている名所だと思うが、実は星型の見事な城郭とは異なり、四角形になっている「四稜郭(しりょうかく)」も存在する。
その四角形の四稜郭に似た史跡が、台湾の台南に存在していた。
台湾の新幹線(高鉄)を使って台北、高雄どちらからも近い台南。中心部に行くなら、新幹線よりも在来線の駅の方が便利だ。
そして台南駅にある観光案内所で地図などをもらい、バスに乗って出発。賑やかな街中を走り抜け、海の方へと向かう。
目的地のバス停を降りると、やがて「億載金城」という、豪勢な名前の史跡にたどり着く。
煉瓦積みの門が出迎えてくれた。
門には橋が渡してあり、日本の城の堀のように水が周りをぐるりと囲っている。出入りできるのは、この一箇所だけらしい。
門をくぐり、レンガに覆われたトンネルを抜けると、広大な緑の敷地に出た。ここがこの城郭の「操練場」とのこと。
城郭の四隅から稜堡に上がれるので、登ってみると城郭を見渡すことができる。海からの風が心地いい。
使用されていた当時を再現して大砲も何門か置かれていた。日本にも馴染みのある、アームストロング砲だ。
周囲をぐるりと巡ってみると所々に跡が残っており、兵士たちのバラック跡や弾薬庫、砲座などが残されていた。
この「億載金城」は清朝の頃(1874年)に作られたものだそうで、当時台南には台湾を統括する「台南府城」が置かれていた事からも、要衝の地だったのである。
今やマングローブが生え、美しい公園のようになっているが、海からやってくるヨーロッパ勢に対して台湾を守るために作られた見事な史跡なのだ。
五稜郭のような広さはないが、実に美しい形をしており、よく管理されていた。今は地元の子供達が社会科見学のためにやってくる、台湾の誇りなのである。
(田原昌)