ラグビーのタックルと、脳振盪などの頭や首の外傷との関わりとは?

近年人気が高まっているラグビー競技は、他競技に比べて頭頚肩部外傷の多いスポーツだ。以前はスクラムで脊髄損傷が多く発生していたが、バイオメカニクス研究などをもとにルール改正が繰り返され、その発生数は大きく減少。

一方、頭頚肩部外傷はタックラーに多く発生するとも報告されている。これまでマウスガード、ヘッドガード、肩パッドなどの防具が開発されてきたが、それらの効果は一定の見解を得ていない。

そこで順天堂大学の研究グループは試合映像を解析し、タックルする選手の頭部位置によって異なる頭頚肩部外傷の発生頻度を調査した。

■研究内容
ランダム抽出した試合映像より、全3970タックルを分析。1つは相手選手に対し、横もしくは後ろに位置するもの(順ヘッドタックル 図1A)、もう1つは相手選手の進行方向に位置するタックル(逆ヘッドタックル 図1B)という2つに分類。そして各チームの外傷記録と照合し各タックルの外傷発生頻度を計算した。

その結果、逆ヘッドタックルは317タックル(8.0%)を占め、その内、22タックルで頭頚部や肩関節の外傷が発生。一方の順ヘッドタックルは3653タックル(92.0%)中、10タックルで外傷が発生している。

外傷別にみると逆ヘッドタックルにおける脳振盪、頚部外傷、バーナー症候群、鼻骨骨折の発生頻度は、順ヘッドタックルと比較し20〜30倍も高いということがわかった。

本研究により、逆ヘッドタックルは順ヘッドタックルと比較し、脳振盪を含む頭頚部外傷が30倍も多く発生することが明らかとなった。まずはこの結果をラグビー指導者、コーチ、選手に啓蒙していき、ラグビー競技における頭頚部外傷の減少や発生の予防に大きく貢献できるものと期待されている。

本研究成果はイギリスのスポーツ医学雑誌「British Journal of Sports Medicine」で2017年11月21日に公開。

掲載誌:British Journal of Sports Medicine
DOI:http://dx.doi.org/10.1136/bjsports-2017-098135

(田原昌)