ウィーンの街を歩いていると、歴史がありそうな門構えのカフェが突如姿を現す。
外観はシックで目立たなくても、一歩中に入ると貴族的な華やかさが出迎えてくれたりもする。
特にリンク内(旧城壁の内側)にはそういったカフェが多く、ウィーンは「カフェの街」と呼びたくなる。
ウィーンでの「カフェ」の扱いは、日本とは少し違ったものとなっている。
普通に「カフェ」と言うと、朝食から夕食までを提供するレストランの機能を兼ね備えた店になる。日本で言う所の喫茶店のようなものだ。
そして「Café Konditorei(カフェ・コンディトライ)」と言うと、自家製のケーキを販売する店であり、イートインできるようになっている形態のものもある。
こちらは食事に関しては軽食程度となっていた。
ケーキの種類の豊富さには、さすがハプスブルク家のお膝元だと感心してしまうが、それ以上に驚くのがコーヒーの種類の多さである。
カフェと言ってもビールやワインなどのアルコール類も提供しており、紅茶は日本と同じような種類だった。
しかしメニューにあるコーヒーのページになると、何ページにも渡っているような店もあってどれを選んだらいいのか困惑してしまう。
コーヒーの飲み方にこんなにも種類があったのかと驚くようなラインナップ。英語の説明がついていたりもするので読んでみるが、どれも同じように思えてくる。
それでは日本にある「ウィンナーコーヒー」があるのかというと、似た物はあるのだがその名前では存在しない。
日本と違うのは、エスプレッソがベースになっていること。そして必ずグラスに水が入ったものが添えられてくる。
良く飲まれているのは「Wiener Melange(ヴィーナーメランジュ)という、エスプレッソに泡立てたミルクを混ぜたもの。
また「Franziskaner(フランチスカーナー)」というウィーン独特のコーヒーには、たっぷりのホイップクリームがのせられている。名前は同じだが、ミュンヘンのビールではないのでご注意を。
そしてアイスコーヒーと間違ってしまうのが「Eiskaffee(アイスカフェ)」。これはアイスコーヒーにバニラアイスやらホイップクリームがのったデザートになってしまう。
他にもリキュール入りのものやお店独自のものもあったりと、実に豊富なコーヒーメニューに驚かされた。
そしてウィーンのカフェはまさに社交場。
朝から多くのウィーン子たちが食事をし、昼過ぎには引退したおじいさんたちがコーヒーを片手に何時間も論議している。
夕方以降はピアノの生演奏を聴きながら、贅沢な時間を過ごす。
作家や音楽家、絵描き達がサロンとして集っていたのも頷ける、優雅なカフェ文化がウィーンにあった。
(田原昌)