人気のミニバンとSUVの死角
アンケートの中でミニバンを推す理由として「家族が増えるから」「子供が大きくなるから」が挙げられた。
確かに子供を作ろうという若夫婦や、これから結婚しようという将来性のあるカップルにとって、定員が多く中が広いミニバンやSUVは魅力的だ。しかしまだ子供もいない若夫婦、カップルはまだ気付いていない死角がミニバンとSUVにあることを。それは何か。
まさしく「死角」である。
ボディサイズが大きなミニバン、SUVは文字通り見切りが悪い。見切りが悪いと何がおきるか、それは運転しにくいという問題である。
最近はハイテク装備でバックモニターやカメラなどが装備されて死角は少なくなる傾向であるが、それらはオプション装備が多く、値段も高い。しかもいくらカメラを装備してもボディサイズが小さくなるわけではない。お買いものなどお出かけ時の駐車や狭い路地を曲がるときなど、この大きなボディサイズが仇となる。中が広いはすなわち、外もでかいのだ。
すると大抵の場合、ぶつける、こすることになる。
うちの話で恐縮だがミニバンの雄、オデッセイに乗っていた時、妻が3週間で2度ぶつけたことがあった。1度目はガードレールに、2度目は家の駐車場で。その時の名セリフはこうであった。
「だって、ガードレールが近づいてきたんだから、しょうがないじゃない!」
そんなわけはない。妖怪か。
なおオデッセイにはバックカメラも、前後ソナーも装備されていたことを付け加えておく。今はコンパクトカーに乗り換え、ぶつけたことはない。
家族はすぐには増えない
子供を作る予定だ、今の子供が大きくなるから手狭になる、そんな将来設計でミニバン、SUVを買うのは時期尚早だ。
なぜなら今すぐ子作りに励んでも生まれるまで1年ほどかかる。子供が大きくなったら狭いといっても、子供が1年で大きくなるのはせいぜい10cm程度だ。すぐに大人になるわけではない。
そこでオススメしたいのがヤドカリ方式だ。つまり大きくなったら、子供が生まれたら大きなクルマを買うという方式である。
ミニバンやSUVという人気のクルマは売れる台数も多く、中古市場でもタマ数が多い。そのため値落ちも激しく、数年であっというまに半値以下になってしまう。必要になったときに、程度のいい中古を手頃な値段で購入するのもいいだろう。
子供の成長につれ、荷物は減る
またもう一つ付け加えたいのが、赤ん坊はある程度大きくなると、荷物が減るということだ。
赤ん坊の時はベビーシートにおむつ、ベビーカーなど装備が多くそれこそ大荷物でラゲッジスペースが必要である。ところが数年たって歩きだし、おむつを卒業すると、とたんに荷物が減る。幼稚園児ともなれば、自我も強くなり、大人ばりに自由に行動しようとする。するとミニバンやSUVの大きな大きなラゲッジスペースは不要となる。
つまり、ミニバン、SUVのようなラゲッジスペースが本当に必要なのは、生後数年程度ということである。
兄弟が多く、数年単位で赤ん坊が生まれる家庭であれば仕方ないが、少子化で一人っ子ということであれば、3~4年程度でお役御免である。それ以上の期間乗るのは、とり回しのしにくさ、燃費の悪さからオススメできない。もっと手軽な小さなクルマがいいのではないか。
残念ながらアンケートは20代30代がメインで、子育て経験はないのでどうしてもイメージ先行、こういう結果になるのも致し方ないだろう。
40代で一通り子供が成長し、ミニバン、軽自動車、コンパクトカーを乗り継いだ筆者の経験から言うと、ミニバン、SUVは必要なときに必要な期間だけ乗るヤドカリ方式になる。
ヤドカリ方式で乗り換え前提である場合、値落ちが少ない車か、本当に好きなクルマを選ぶのがよい。クルマは恋愛・結婚と同じで、気に入った異性であれば、ある程度お金がかかるのも仕方ないし、許容できることだろう。
友人夫妻の場合、子供が2人いたが、結婚前から子育て期間を含めてずっと3ドアハッチバック・クーペの最終型セリカに乗り続けていた。
「いやー、手狭でしょうがないんですよ~(笑)」
手狭だが、なんとかなるものだ。聡明なるIGNITE読者においてはイメージに惑わされず、楽しい人生と楽しいカーライフを送ってほしい。
(野間 恒毅)
*【Tig.】Tokyo image groups / mitsu1244 / KAORU / PIXTA(ピクスタ)
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