実際に試乗してその自然さに驚く
エンジンを停止、完全EV走行が可能なモデルだとどうしても気になるのがそのエンジンの起動・停止時のショックや、クラッチのつなぎ目による違和感。特に信号の多い街中を低速で走行する場合は、EV走行、モーターアシスト走行、クルーズ走行、回生ブレーキ、停止と頻繁に切り替えが多くなり、そのショックや違和感は増長されがちだ。
ところが実際に横浜の街中を走ってみると、違和感はほとんどない。エンジンのスタート、ストップもエンジン音の有無とメーター内のインジケーター、タコメーターをみないとそれと気付かないほどだ。このは日産エンジニアが特にこだわった部分だというが、その努力は実っているといっていいだろう。
高速道路では合流でハイブリッドの恩恵に預かれる。旧式の短い合流ランプが特徴の首都高横羽線であっても、アクセルを踏み込めばモーターのアシストにより、一気に本線の流れに乗ることができる。この余裕ある走りによりストレスから解放され、長距離運転も疲れを知らないことだろう。
また特筆すべきはブレーキ性能と制御である。
昨今自動ブレーキ技術がもてやはされている傾向にあるが、運転の主体は依然ドライバーにあり、ドライバーの判断、操作により確実にコントロール、停止できるものでなければ意味がない。
大きく、重くなりがちなSUVにモーターやバッテリーを搭載、さらに重くなったハイブリッドモデルの車体を止めるためのブレーキは非常に重要である。その点このエクストレイル・ハイブリッドはブレーキ操作に対してリニアに反応し、制動力も十分にでていたことを改めて記しておきたい。
JC08モードの燃費数値を高めることに執心する余り、回生ブレーキと油圧ブレーキの切り変わりが遅く、制動距離が延びるということはない。これは特に雨や雪道といったABSの効きやすい路面を走るSUVでは重要な点であり、その点北海道のユーザーや雨の日も走り回る高速道路パトロールカーで採用例の多いエクストレイルならではの美点だ。
過熱するSUV燃費向上競争
世界的に人気のあるSUV市場は依然熾烈な戦いが続いている。ハイブリッドの直接競合ではホンダ・ヴェゼル、トヨタ・ハリヤー、レクサスNX、ディーゼルではマツダ・CX-5、そして欧州はダウンサイジングターボのアウディQ3、ポルシェ・マカンと価格レンジ、ボディサイズは様々だが幅広くひしめいている。
エクストレイルは元々の4WDシステム、ALL MODE 4x4iにより前後トルク配分を自動的に制御、コーナリング時にはブレーキ制御を付加する機能により質の高い走りを得ている。これにハイブリッドシステムを追加することで、4WDの高い基本性能にハイブリッドの力強い走りと燃費性能を得たのが特長だ。前後駆動配分を50:50に固定するデフロック機構は雪道や悪路での脱出時、モーターでリアを駆動する4WDとは一線を画す。
街中での実燃費は15km前後、高速道路では20km/Lほどに伸びるという。自動的に4WDに切り替えるAUTOモードは乾燥路ではほとんどFFで駆動するため燃費に影響しないという。雨、首都高速の継ぎ目など部分的に滑りやすい場面では瞬時にリアに駆動を配分、車両を安定させるのでぜひ積極的にAUTOモードを使ってほしいと日産の技術陣は胸を張る。
気になるバッテリーの搭載位置は荷室の床下になっているため、広いキャビンと荷室は健在、オールラウンドに使用できるのだ。
唯一の弱点?
これだけの性能と市場評価をもちながら、唯一弱点がある。それは「地味で目立たない」ことだ。他のSUVが華やかで注目を浴びているのに対し、エクストレイルは何故か目立たないと日産も認めている。
質実剛健、成績優秀、スポーツ万能。
例えて言うなら学級委員長タイプということだろうか。もっとモテてもよさそうなものだが、逆にこの地味さ、普通さがいいという向きもあるだろう。
分かっている人は乗っている、そんな1モデルといってもいい。その良さを是非試乗して確認してほしい。
(野間 恒毅)
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