9月。初秋の風が吹き始め、実りと収穫の季節がやってくる。夏の残り香と秋の気配を感じるおいしい食材で、今年はちょっと贅沢に。
■鱧と松茸
『出会い物』という概念がある。走りと名残の時期がわずかに重なる食材の幸福な出会いを表す。
夏が旬の鱧と、秋が旬の松茸はその代表格。この時期に忘れず食べたい。
お椀や土瓶蒸し、しゃぶしゃぶなど調理法は様々。初秋と晩夏、日本の美味しい四季を象徴するような組み合わせである。
■新イカ
江戸前料理が好きなら外せないのが『新イカ』。
甲イカ(墨イカ)の子どもで、その何とも淑やかな歯触りが魅力だ。
その正身を一貫づけあるいは二貫づけにした寿司は、季節の味覚として寿司通たちに人気。ただし旬は非常に短く高価なので、デート食の際には予算の確認を。
■ジロール
日本名は『アンズタケ』というジロール。
フランス料理のみならず世界中で食されている。日本ではあまり食されないが、杏のような甘酸っぱい香りとアクセントの効いた味わいで、パスタや肉料理、ピザなど西洋料理には万能のキノコだ。
キノコといえば秋、と思って油断してはいけない。ジロールの旬は夏。9月のうちに食べておこう。
■里芋
里芋ってご馳走?……というなかれ。
江戸時代には『芋名月』と呼ばれたお月見。そのお供えにかかせないのが里芋だ。2014年の中秋の名月は9月8日。お月見にオススメなのは8月〜10月が盛りの石川芋。小ぶりなので、皮ごと蒸かした衣被ぎに仕立ててパクっと頬張れば最高の肴となる。
里芋ゆでるからウチ来ない?などと、気になる彼女を誘ってみるとかなりの意外性を発揮できるかも。
■イチジク
アダムとイヴが食べた禁断の果実の正体という説もあるイチジク。
馥郁たる香りと独特の食感がとても官能的な食材だ。
旬は夏から秋。そのまま生食、コンポートやタルトなどの菓子はもちろん、サラダや肉料理にも合う。
また、乾燥のいちじくはチーズとともに手軽なワインのつまみになる。
秋の入り口の9月は気候も良くお出かけ向き。
季節に敏感なレストランや気合いの入った食材店、あるいは直接産地に出向いて、今しか味わえない逸品を探してみては。
(くぼきひろこ)