ウィーン中心部から見て東側、ドナウ川沿いに広がる広大な敷地。緑の多いその場所は「Prater(プラーター)」と呼ばれ、元々はハプスブルク家の狩猟場だった。
そこを1766年に皇帝ヨーゼフ2世が一般に開放し、今に至るまで市民の憩いの場となっている。
そして1873年には、日本も参加した万国博覧会の会場にもなった。
1897年、フランツ・ヨーゼフ1世の即位50周年祝賀祭にあわせ、イギリス人技師のウォルター・バセットによってこのプラーターに巨大な観覧車が建造された。
それが地上60メートルを超える「Wiener Riesenrad(ウィーン大観覧車)」である。
1945年には空襲によって全てが破壊されたものの、ウィーン復興のシンボルとして復旧が進められ、1947年には運行が再開されたのだという。
そんなプラーターと大観覧車の歴史に関しては、チケットを購入してから入る歴史パノラマで知る事が可能だ。
1944年の火災後に外されたゴンドラを利用し、その内側にミニチュアを使って解説がなされている。なかなか面白い趣向だ。
それでは実際に大観覧車に乗ってみよう。
ゴンドラは15台で外観は皆同じ。赤く塗られた本体に白の窓枠がはめられており、古い列車の客車を思わせるようで可愛らしい。
全高は64.75メートル、回転速度は毎秒0.75メートルだが、日本にあるような一般的な観覧車と違って途中で止まることがある。それは別に古いからなのではないので、ご安心を。
大観覧車にはイベント用のゴンドラが7台用意されており、誕生日パーティーやウェディングなどに使用できる豪華な内装が施されている。
テーブルや椅子、スワロフスキーによる装飾までついた豪華なゴンドラは、予約をすれば誰でも使用できる。二人きりでウィーンの夜空を眺めながらディナーというのも、素敵な思い出になるだろう。
そして大観覧車の足元にある厨房から料理が運ばれるため、不定期に回転が止まるという訳だ。
高さが十分あり、ウィーン市内を端の方から眺める形となる大観覧車。高層建築は少ないが、足元の遊園地の賑わいから遠くまで広がる静かな光が美しい。
昼間にはきっと、宮殿などが見渡せる違った景色が楽しめることだろう。
(田原昌)