人口が少ないので目立たない存在ではあるが、チェコ共和国の人ほどビールを飲む人たちはいない。
その一人当たりの消費量は、あのドイツやアイルランド、ベルギーを遙かに上回っているのだ。
そんなビール大好き人たちの魂を燃え上がらせるパブが、チェコを始めとして存在する。
その名もストレートに「THE PUB(ザ・パブ)」だ。
今回ご紹介するのは「プラハ1店」。
ビール好き仲間達が集う大人気の店なので、予約をするか早めに行くのが良い。
店に入り、奥へ進むと冷蔵室の中に巨大なタンクがずらりと並んでいた。日本のような20Lや25Lのケグでは量が足りないのだ。
ここから既に、チェコ人の怖ろしさを感じる。
店内には3 種類の座席がある。カウンター、2~4人掛けの小さめの座席、そして4〜10人が座れるような広い座席だ。
一番人気なのは、テーブルの中央にビールのサーバーが付いている座席。
自分たちで好きにビールを注げるような仕組みになっている。
タップは4つ程付いており、それぞれ注いだ分だけ上に付いているモニターに何リットル飲んだか表示される。
上にあった巨大なタンクから管が伸びていたのは、これらのテーブルのサーバーに繋がっていたからなのだ。
ビール好きの心をくすぐるのは、この仕組みだけではない。
実はこのビールサーバーで飲んだ量が店内の巨大スクリーンに表示され、各地にある「THE PUB」の店舗とも連携して順位が表示されるようになっている。
例えば「プラハ1店」の2番テーブルが20杯(10L)で1位、5番テーブルが10杯(5L)で2位と表示される(実際は10テーブル位はある)。
しかし全店舗で見ると「ピルゼン1店」の総量が50杯(25L)で1位、「プラハ1店」は30杯(15L)で2位となるわけだ(実際は10店舗以上)。
表示は刻々と変わっていき、目の前で「プラハ1店」が「プラハ2店」を追い越していき、店内には歓声が上がる。
こうして店内のテーブル同士の争い、果ては店舗同士の争いとなってビール飲み競争は過熱していくのだ。
現在の最高記録を聞いて度肝を抜かれた。
個人トップは29杯、14Lである。
そして何人で参戦したのかは不明だが、団体戦では757杯(378.5L)という記録が打ち立てられている。日本では店内のビールが空になってしまう勢いだ!
日本人にとっては怖ろしい結果だが、それだけチェコ人はビールを愛し、ビールを飲む。
そんな彼等が熱い想いを込めて作るビールが美味いのにも、納得がいくのだった。
(田原昌)