表面をチョコレートでコーティングした「チョコレートケーキの王様」と呼ばれる「Sacher torte(ザッハトルテ)」。
貴族たちのために作られた濃厚なケーキは、ウィーンの「ホテル・ザッハー」で誕生し、今やオーストリア代表の菓子となっている。
ウィーン国立歌劇場の隣、ホテル・ザッハーの1階に「Cafe Sacher(カフェ・ザッハー)」がある。
カフェといってもウィーン特有のカフェスタイルであり、朝食から提供しているので朝一番に行ってみた。観光客に大人気の店なので、その方が並ばずに入れるというのもある。
ホテル・ザッハーの紋章が入った、ベルベットのソファー。シャンデリアに鏡張りの窓といった、宮殿のような作り。白と赤を基調とした内装は、まさに優雅な貴族の世界であった。
メニューはテーブルの中央にかけられている。新聞のような面白いデザインだ。
そして古い映画で見るような装いのウェイトレスが、親切に対応してくれる。そんな所も、ウィーンらしさを感じさせてくれた。
ザッハトルテは濃いチョコレート色のケーキに、ザッハーの印が入ったチョコレートタブレットが乗ったもの。
外側を包んでいるチョコレートは、クリーム状のチョコレートを塗っているのではなく、フォンダンにして塗られている。少々硬めなのは、そのせいだ。
そしてザッハトルテは砂糖の入っていない、甘くないホイップクリームと共に饗される。ケーキ自体がとても甘いので、それを調整するのに丁度良い。
なお、カフェではザッハトルテ以外のケーキやデザートもあるので、何人かで行った場合はそちらもお勧め。
「Marillenpalatschinken(マリレンパラチンケン)」はいわゆるクレープで、アプリコットの甘さと酸味が丁度いい。
「Apfelstrudel(アプフェルシュトゥルーデル)」はアップルパイで、薄いパイ生地に煮詰めたリンゴがぐるりと包まれたものだ。
ザッハトルテは日持ちするので、お土産として買って帰ることも可能。
カフェと同じ1階にあるSacher Confiserie(ザッハー・コンフィズリー)では、木箱入りのザッハトルテや手軽に食べられる真四角の小さなザッハトルテを扱っている。
可愛らしいお土産として、カフェ・ザッハーのシェフやウェイトレスたちの格好をしたテディベアもいい思い出になるだろう。
(田原昌)