京都寺町二条に本店を構える漆器専門店「象彦」は、2021年に創業360周年を迎え、代表取締役社長・西村毅氏が十代当主「西村彦兵衛」を襲名した。
2つの節目に当主の想いを投影し、漆器の技術の粋を集めた記念作品を製作。この記念すべき作品を一挙に閲覧できる作品展を、11月19日(土)~11月25日(金)に開催する。
記念作品展のテーマは「復刻と継承」
十代・西村彦兵衛氏は、象彦360年の歴史の中で眠っていた幻の図案・高度な蒔絵技術とデザインを、記念作品として現代に蘇らせた。「未来に向けた新たなものづくりへの挑戦」とするという思いのなか、今回の記念作品展のテーマを「復刻と継承」とした。
ここからは、記念作品を一部抜粋して紹介していこう。
挑戦:若冲鶏図蒔絵 硯箱(製作協力:細見美術館)
近年その超絶な技巧と作品の独自性で注目されている江戸時代の画家・伊藤若冲の絵画は、これまで蒔絵の下絵となることがほとんどなかった。若冲の絵画を蒔絵で表現するとどのような作品となるのか。期待を持って挑戦した。
蓋表に描かれている「雪中雄鶏図」(細見美術館蔵)は、若冲が「景和」と名乗っていた30代前半頃に描いたとされる初期の名作。彩色豊かで精緻に描かれた鶏を研出し、蒔絵、高蒔絵、研切り蒔絵という技法を併用し、忠実に表現した。
蓋裏に描いた「虻に双鶏図」(細見美術館蔵)の鶏一羽と虻は、銀粉と炭粉を使用した銀研切り蒔絵で水墨画のように幽玄に表現した。銀研切り蒔絵(ぎんとぎきりまきえ)の作品は象彦ではおよそ100年ぶりの製作となる。
銀研切り蒔絵は、黒く描くところに炭粉、銀色の部分に銀粉を蒔き、全面に漆を塗り込んだあと、炭で絵を研ぎ出す研出し蒔絵の一種だ。
硯箱の身内側は蓋裏と同じ風情を表現し、若冲の落款を水滴に施した。
復刻:夕顔 蒔絵宝石箱
次に、“復刻”をテーマにした作品を紹介する。象彦所蔵のうち、下絵として存在しながらも蒔絵にされたことのない作品を「夕顔 蒔絵宝石箱」として復刻させた。
源氏物語にも登場する夕顔は、京都の人々に愛される題材。象彦が所蔵している可憐な下絵を蒔絵で描いた。この作品では夕顔の葉の色に濃淡をつけ、葉脈も金・黒で描くことで葉の明暗と奥行きを表現する新しい試みに挑戦している。
「象彦」代表「十代・西村彦兵衛」西村毅氏
西村彦兵衛氏は、日本国内において伝統を継承しながら新しい漆器のデザインや技術の開発を行うかたわら、漆器の魅力を発信すべく、各地での講演活動も行う。またヴァシュロン・コンスタンタンやモンテグラッパなど海外ブランドとのコラボレーション作品も多数発表。
記念作品は他にも多数展示する。受け継がれ続ける伝統と格式、そして新たな挑戦が織りなす芸術作品を堪能しよう。
象彦創業360周年 十代 西村 彦兵衛襲名 記念作品展
期間:11月19日(土)~11月25日(金)※22日(火)は店休日につき休業
時間:10:30~17:30
会場:象彦 京都寺町本店2階
所在地:京都市中京区寺町通り二条上ル西側 要法寺前町719-1
店舗詳細ページ:https://www.zohiko.co.jp/shop/
記念作品展 特設サイト:https://www.zohiko.co.jp/360th/
(hachi)