長野県須坂市にて歌川国芳「木曽街道六十九次」を10年ぶりに公開

浮世絵に興味がある人は必見。善光寺の御開帳記念として、10年ぶりに歌川国芳の浮世絵「木曾街道六十九次」が一般公開となる。

江戸期の中山道を描いた「木曾街道六十九次」

2022年、長野県では7年に1度の善光寺御開帳がある。江戸時代から多くの人々が中山道を通り、善光寺参りをするために旅をしてきた。中山道は別名「木曽街道」と呼ばれ、浮世絵の題材としてたびたび描かれてきた。

今回は、善光寺御開帳を記念して、所蔵の歌川国芳の浮世絵「木曾街道六十九次」71点を前期・後期にわけて公開。全て公開するのは10年ぶりとなる。

歌川国芳(1797~1861)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師。勇壮な武者絵で人気を博し、武者絵の国芳として有名だが、手がけたジャンルは広く、戯画、風景画、役者絵、美人画など多岐にわたり、その画業は葛飾北斎に並ぶほど。近年、その評価はますます高まっている。

見どころはユーモアあふれる謎かけ

[木曽街道六十九次は、出発地の日本橋から目的地の京都まで69の宿場を題材にした作品。しかし、この作品で国芳は宿場の風景は描かずに、宿場の名前にかけた人物や物語を描くことで、木曽街道を表現した。つまり、浮世絵が一種の謎かけになっている。

木曽街道六十九次「守山」では、達磨大師がもり蕎麦を山のように食べる姿が描かれ、「守山」と「山のようなもり蕎麦」が掛けられている。

このように、故事・伝説・歌舞伎など、当時の庶民がよく知る物語や人物の一場面を木曽街道の宿場の名前にかけて描くことで、国芳は木曽街道を表現。絵だけでなく、この謎かけを読み解くのがとても面白い作品だ。

木曽街道六十九次「守山」

「木曽街道六十九次」は国芳の集大成

「木曽街道六十九次」は、嘉永5年(1852)に発行された国芳晩年の作品。そのためか、国芳は、木曾街道六十九次71枚のなかに、それまで自身が培ってきた浮世絵の様々なジャンルを取り入れている。

宮本六三四といった勇猛な武者が登場してくるものもあれば、コミカルな描写のもの、美しい風景の描写、歌舞伎役者を思わせる人物のたたずまい、肌をあらわにした女性など、様々な人物が登場し見ているこちらを飽きさせない内容となっている。

木曽街道六十九次「落合」

「木曾街道六十九次」は、歌川国芳ファンならずとも楽しめる浮世絵屈指の傑作だ。この機会に見ておきたい。

善光寺御開帳記念 歌川国芳「木曽街道六十九次」
会期:(前期)4月10日(日)~5月30日(月)(後期)6月1日(水)~7月11日(月)
入館料:900円
休館日:毎週火曜日
場所:豪商の館 田中本家博物館 
所在地:長野県須坂市穀町476番地
HP:http://www.tanakahonke.org

(田原昌)

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