化石燃料を大量に消費する航空業界だが、持続可能社会を実現するために積極的に取り組んでいるエミレーツ・グループのプロジェクトを紹介しよう。
■エミレーツ・グループの3分野の取り組み
エミレーツ・グループは、3月3日の世界野生生物の日に合わせて、野生動物とその生息環境の保護に対する長年の取り組みを再確認した。また、全世界の従業員を対象としたオンライン環境フォーラムでは、組織全体の保護活動にスポットライトを当てた。
環境フォーラムでは、ドバイ砂漠保護区、オーストラリアのエミレーツ・ワン&オンリー・ウォルガン・バレー、エミレーツ航空のスカイカーゴ部門の専門家が、ドバイでの絶滅危惧種や野生動物の保護活動、オーストラリアの山火事後の復旧活動、野生動物の密売を阻止するためのエミレーツ航空の取り組みなどについて講演した。
■ドバイ砂漠保護区の環境保護
225平方キロメートルのドバイ砂漠保護区(DDCR)に資金を提供し、支援している。ドバイ砂漠保護区は、560種類以上の生物が生息する内陸の砂漠の保護区で、31,000本の自生樹木が植えられており、固有の動植物を含むドバイ特有の砂漠環境を保護する上で重要な役割を果たしている。
中でも、ドバイ砂漠保護区の再導入プログラムは成功を収めている。
プログラム開始以降、アラビアオリックス、アラビアンガゼル、サンドガゼルなどの有蹄類の個体数は1,300以上に増加した。さらに、2,800羽以上のフサエリショウノガン(房襟小野雁)がドバイ砂漠保護区に再導入されている他、サバクワシミミズやミミヒダハゲワシなどの重要な鳥類も保護区内に生息しており、一部の鳥類は衛星タグで監視されている。
■世界遺産の生息環境を再現
オーストラリアでは、世界遺産に登録されているグレーター・ブルー・マウンテンズ地区にあるエミレーツ・ワン&オンリー・ウォルガン・バレーで、12年以上にわたり自生樹木や低木の保護を支援している。環境や遺産への取り組みをスケールアップすることで、カーボン・ニュートラル・リゾートとしての強い信念を示している。
この10年間で、フィールドガイドやホテルの従業員、宿泊客の協力を得て、25種類の在来種を代表する100万個以上の種子を集めたシードバンクを構築した。
2020年初めに地区の一部が被害を受けた山火事の後、シードバンクの苗は、被害を受けた地域の再繁殖に重要な役割を果たしており、山火事の影響を受けた昆虫、爬虫類、小型有袋類の自然かつ複雑な生息環境を再現するために役立っている。
■野生動物の違法輸送を阻止
エミレーツスカイカーゴは、ライオン、ヒョウ、虎などの大型ネコ科動物や、ゾウ、サイ、爬虫類などを含む野生生物の違法取引に対して非常に厳しい態度をとっており、ワシントン条約では合法とみなされる場合でも、趣味で野生動物を狩猟する「トロフィー・ハンティング」での動物の剥製や毛皮など野生生物に関連する製品の持ち込みや輸送を一切禁止している。
さらに、ドバイ税関、ドバイ警察、その他世界各国の当局と協力し、2017年以降、野生動物の違法輸送を阻止することに貢献している。
二酸化炭素の排出量の削減と責任ある消費に加えて、野生動物の生息環境の保全は、エミレーツ・グループの環境持続性確保における3つの柱の1つだ。エミレーツ・グループは、次世代の人々は本来の環境下での野生動物の姿を楽しむべきであり、世界の美しさと生物の多様性は旅行のインスピレーションになると考えている。
持続可能社会を作ることが、ビジネスにもプラスになると考えるエミレーツ・グループ。この方向性は、カーボンニュートラルを実現していく上での大きな推進力になりそうだ。
エミレーツ航空の取り組み:https://youtu.be/_m4A1yc5BFM
(冨田格)