100年後、海の色は何色だろうかー。
近年の研究によると、地球温暖化の影響で海はより濃い青色に変化していくと言われている。100年後の海の色を感じるインスタレーションが公開される。
■藍で染め上げた100年後の海の色
ギリシャ・クレタ島生まれのビジュアルアーティスト/画家のジョージ・スタマタキス氏は、温暖化で海は濃い青色に変化していくという科学的予言を出発点に、自身が撮影した海中写真を絹に転写し、日本の藍で染め上げた新作インスタレーション『現象の色』を、12月18日(金)より「すみだ北斎美術館」で世界初公開する。
それが、Tokyo Tokyo Festival「現象の色 The Color of Phenomenon」ジョージ・スタマタキス個展。
■コロナ禍によって翻弄された個展
本展覧会はオリンピック・パラリンピック関連文化プログラムTokyo Tokyo Festivalの一環として構想され、2019年の企画当初、江戸時代からの伝統的な藍染工房が残る墨田区での滞在制作が計画されていた。
しかし、新型コロナウイルスの世界的流行により、日本政府も外国人の入国を規制したため、ジョージ・スタマタキス氏は一時来日を諦めざるを得なかった。2020年6月に予定していた展覧会は延期され、遠隔地アテネでの制作が始まった。
ジョージ氏はギリシャ西部の「7つの島」と呼ばれるエリアのうち、コルフ島、ケファロニア島、イタカ島、パクソス島、アンティパクソス島周辺で近年6000枚以上の海中写真を撮り溜めてきた。さらに今夏、ふたたびパクソス島を訪れて撮影したものを新たに加え、その中からインスタレーションに採用する62枚のイメージを厳選。
そのイメージをトルコ国境付近のアレクサンドロポリにある印刷工房で絹に転写し、日本から空輸した徳島産の藍で染めた。10月の規制緩和とともに滞在ビザを取得し、念願の来日が叶ったジョージ氏は、自らの手で新作インスタレーション『現象の色』を完成させた。
会場には、制作プロセスを記録したドキュメンタリー映像(監督:ゾーイ・マンタ)、美術史家デニス・ザカロポロスの寄稿文も展示され、この2020年にしか辿り得なかった奇妙な旅の軌跡を、作品とともに振り返る。
■ジョージ・スタマタキス氏プロフィール
ビジュアルアーティスト/画家
1979年ギリシャ・クレタ島生まれ、アテネ在住。イレアナ・トゥンタ現代美術センター所属。空間を超越し、風景の概念を拡張する芸術体験を志向。政治的立場として自然と対話し、さまざまな文化の歴史的刻印を取り入れながら、徹底性と独特の表現法を追求する。
アテネ美術学校在学中に東京藝術大学彫刻科へ留学。経済学とジャーナリズム/メディアの学位も持ち、2016年よりアテネ産業経済大学「芸術と教育」プログラムの研究員を務める。
土日は、展示空間にてショートパフォーマンスも上演される。藍で染められた100年後の海の色はどんな蒼なのか、自分の目で確かめてみてはいかがだろう。
Tokyo Tokyo Festival「現象の色 The Color of Phenomenon」ジョージ・スタマタキス個展
会場:すみだ北斎美術館(MARUGEN100)
日時:12月18日(金)〜26日(土)
※21日(月)は休館日
時間:11:00(土日9:30) 〜17:30(最終日16:00)
詳細:https://www.facebook.com/events/228948738318903
(冨田格)