今年の会津は珍しく雪が少ない。それでも気温は低いこともあるので、温かな店内で頂く会津蕎麦はお腹と身体に優しい。
若松市内でも、山の方にある「桐屋・夢見亭」は古い日本家屋を使った素敵な店だったが(現在は閉店)、今回は市内中心部にある「桐屋・権現亭(きりや・ごんげんてい)」を訪れた。
白くて大きな暖簾を見ると、美味しい蕎麦にありつけると思ってお腹が鳴る。
店内は木材と石材を使った、ホッとするような作り。
巨大な木のテーブルは、地元の末広酒造からもらったという酒樽の蓋。どっしりとしていて、店によくなじんでいる。
寒い季節はついつい温かい蕎麦を頼んでしまいそうだが、ここは蕎麦の美味さを味わうために、冷やしでいこう。季節の野菜を使った「天ざるそば」と、冷やかけそばに海老とおろしがのった「冷天おろしそば」を注文する。
こだわりの蕎麦に挑戦したいという人には、福島県のオリジナル品種「会津のかおり」などが味わえるセットがオススメ。飯豊山の水だけで味わう「夢見そば(水蕎麦)」は、香りが楽しめる逸品だ。
「天ざるそば」にはなんと、会津で栽培されている朝鮮人参の天ぷらが!会津藩の藩政時代に奨励されて栽培していた朝鮮人参は、思ったほど苦くはなく、それでも薬効がありそうな味だった。非常に珍しい天ぷらだ。
「冷天おろしそば」には、海老がたっぷり。ちょっぴり辛い大根おろしが、口の中をさっぱりとさせる。
するすると喉越しの良い蕎麦と、鼻を抜けていく香り。こういう美味しい蕎麦を食べるためだけに、会津を訪れたいと思うほどだ。
お腹に余裕があれば、会津の郷土料理も味わってほしい。ふわふわの豆腐で作られた厚揚げに、独特の味噌を塗った田楽はたまらなく美味しい。
また、日本酒が美味しいのも会津の特徴。夜だけでなく、昼からでも飲めるので試してみよう。
会津藩の始祖である保科正之(ほしなまさゆき)から始まった、会津と蕎麦の関係。
温もりのある店内で、じっくりと味わいたいこだわりの蕎麦だ。
(田原昌)