広いフランスは、当然の事ながら地域によって様々な料理がある。それに、接している隣の国の影響もあり、南仏はイタリアやスペインの料理と、そしてアルザス=ロレーヌ地方はドイツ料理に似る部分も多い。
南仏を旅していると、魚介類をふんだんに使った料理が多く、ヨーロッパでは唯一スペインで食べる「蛸」も、南仏では食されている。
そんな南仏で素敵な雰囲気の肉屋に入った。ここではランチに、アルザス=ロレーヌ料理を提供するという。
店内は一気に雰囲気が変わって、フランスと言うよりもドイツ。席数は少ないが肉屋とは思えない素敵な内装に惚れ惚れする。
地元のおばさん達が、楽しそうにランチを頂いていた。
メニューは残念ながらフランス語のみだったが、店主が丁寧に内容を説明してくれた。
「アルザスは肉料理が美味しいからね」と、その地方で食されているメニューが並ぶ。セットのムニュがお得なので、それをお願いする。
前菜はスペインのピンチョスのような料理。何種類ものハムやソーセージを、竹串に刺した状態で出てきた。
メインに頼んだのは、アルザス=ロレーヌ地方の郷土料理、「Quiche(キッシュ)」。「Quiche Lorraine(ロレーヌ風キッシュ)」なので、ベーコン入り。たっぷりのベーコンが香ばしくて、とても美味しい。
もう一つのメインは「Choucroute garni(シュークルート・ガルニ)」。アルザスの伝統的な料理の一つである「Choucroute(シュークルート)」に、ソーセージとベーコンが添えられている。ソーセージのひとつはドイツ・バイエルン地方代表の「Weißwurst(ヴァイスブルスト)」だ。
シュークルートは、ドイツで言う所のザワークラウトであり、乳酸発酵させた細切りのキャベツ。それを煮てあるのか、温かくて美味しい。酸味はそれ程でもなかった。
料理が終わると、最後はエスプレッソ。これまた可愛らしい柄の陶器で出てきた。
細長い陶器に小さなエスプレッソ用のカップがふたつ。真ん中にサブレが幾つも載せられており、最後まで楽しませてもらった。
フランスは、どの店に入っても料理が美味しい。下見をするのもいいが、「ここだ!」という自分の直感を信じて入っても外れることはないと思う。是非色々な地方の料理を試して欲しい。
(田原昌)