全国各地にシネコンができたおかげで、どこでも最新の映画をすばらしい環境で楽しめるようになったのはとても良いことである反面、地元に溶け込んだ個性的な映画館が姿を消していくのは寂しいことでもある。
名古屋駅近くにある座席数51のミニシアター「シネマスコーレ」も、まさに個性的な地元の映画館。
鬼才・若松孝二監督が1983年に、大劇場で上映されない作品を掛けるためという目的で開設したこのシアター、現在はアジア映画やインディーズ映画を中心に上映している。
この「シネマスコーレ」の副支配人・坪井篤史氏は、「名古屋を映画で一番熱い都市にする」という野心をもって「名古屋 映画館革命」を実践している。
そんな坪井氏と「シネマスコーレ」を追った番組『メ~テレドキュメント「シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~」』が第55回ギャラクシー賞上期選考(2017年4月1日~9月30日放送分)のテレビ部門の入賞作品に選ばれた。
■ギャラクシー賞とは
放送批評懇談会が日本の放送文化の質的な向上を願い、優秀番組・個人・団体を顕彰するために、1963年に創設された。テレビ、ラジオ、CM、報道活動の四部門制をとっており、毎年4月1日から翌年3月31日を審査対象期間と定め、年間の賞を選び出している。
テレビ部門においては、今後本作を含む7本の選定作品と下期選定作品(2017年10月1日~2018年3月31日放送分)を合わせた中から、ギャラクシー大賞1本、ギャラクシー優秀賞3本、ギャラクシー選奨10本(予定)が選出される。最終選考結果は、2018年6月上旬に発表予定。
■シネコン化が進む中で、シネマスコーレは単館で奮闘を続けている
名古屋駅周辺でもシネコン化が進む中で、シネマスコーレは単館で奮闘を続けている。映画監督や出演者を招き、斬新な切り口で繰り広げるトークショーや、スクリーンの前に出演者が生で登場する演出を実行するなど、坪井氏は独自のイベントを開催して映画ファンの開拓を試み、映画監督らの信頼も厚い。
シネマスコーレの支配人・木全純治氏も、かつてはアジア映画による文化交流を図った映画界の「革命児」だった。
その木全氏の理解と協力があってこそ、坪井氏は「名古屋 映画館革命」を進めることができている。
木全氏は、坪井氏と映画の趣味が合わないと言いつつも、「映画館革命」を実現するため、劇場に高価な機材を入れたり、映画館の命であるスクリーンの前でライブパフォーマンスすることを許したりと、坪井氏を信用し、任せている。
そして、それが劇場としての魅力にも繋がっている。
部下が常識外れの発想を行動に移そうとした時、「やってよし!」といえる懐の深い上司の下で、「名古屋 映画館革命」を進める坪井氏。
「映画の薀蓄を語るのではなく、映画を普段見ない人たちに関心を持つきっかけを作りたい」と語る坪井氏は、大学の非常勤講師として学生に映画の魅力を語る。隠れ家にしているアパートには、数千本もの映画のVHSが保管されており、休日には町に出て中古のVHSを買い漁る。
一般の人の目には、ちょっと引いてしまうほど「映画三昧」の日々を送る坪井氏が仕掛ける、映画館の常識を打ち破る「超次元絶叫システム」の始動をカメラは追いかけていく。
エンターテインメントには意外性や創造性があるほうが面白い。
個性を貫くことが、自身の存在価値を高め、人を惹き付ける。
そんなことに改めて気付かされるこの番組が、ギャラクシー賞でどのような評価を受けるのか、最終選考結果を楽しみに待ちたい。
名古屋テレビ(メ~テレ)
https://www.nagoyatv.com/
『劇場版 シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』公開中
坪井氏の異常なまでの映画への執念とその生き様を追った異色のドキュメンタリーが未公開シーンを加え「劇場版」として公開されている。
【上映スケジュール】
東京 「UPLINK」 2018年1月20日(土)~1月26日(金)
大阪 「シネ・ヌーヴォX」~12月1日(金)
神戸 「元町映画館」 ~12月1日(金)のうち数回上映
京都 「京都みなみ会館」2018年上映予定
愛知 「シネマスコーレ」再上映予定
<第55回ギャラクシー賞 上期 テレビ部門 【入賞作品】>
「メ~テレドキュメント「シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~」
放 送:2017年5月28日(日) 26時44分~27時47分
プロデューサー:清水伸司、村瀬史憲
ディレクター:樋口智彦
ナレーション:竹中直人
編 集:世古和弘
音 効:堀敦詞
公式サイト
http://cinemakyosokyoku.com/
(いたる)