燕(つばめ)温泉は日本百名山の妙高山の登山口にある温泉地。温泉街から少し離れた場所に「黄金の湯」と「河原の湯」のふたつの野天風呂があり多くの登山客も利用する。
車で燕温泉を目指して坂道を登っていく途中、登山客であろう人々とすれ違う。
道の両側に温泉宿や土産物店が現れると温泉街。とはいえ温泉宿は5軒、土産物屋は2軒の小さな温泉地である。
温泉街入口の左側に建つ3階建てのロッジ風の建物が今回紹介する「樺太館」。
道路側から階段を数段上り玄関へ入るとフロントがあり、脇に「黄金の湯」と「河原の湯」への簡単な道順が描かれた案内図が貼ってある。
宿の大浴場は内湯のみで、露天風呂入浴を希望の場合は宿から歩いて野天風呂を利用する。
部屋はトイレ付和室2室、トイレ無し和室が11室の全13室。
チェックインのあと、女将みずから荷物を持って部屋まで案内してくれる。部屋に入ると窓から幾重にも重なる山々の雄大な景色が素晴らしい。
浴衣に丹前を羽織り、寸志用の小銭を持ってさっそく野天風呂へ出かける。向かうのは宿から5分ほどの場所にある「黄金の湯」。
こちらは男女別の湯船があり、簡素な造りだが脱衣所もある。岩風呂の温泉は青みがかった乳白色の綺麗な色を放ち、寒風に晒されているからか湯温は低い。足元を確認しながらゆっくりと肩まで湯に浸かり、振り返ると妙高山の雄姿がそびえる。背後には樹々が生い茂り、野趣あふれる野天風呂を満喫した。
温泉からあがり黄金の湯の先の「惣滝」の見える場所へ行くと正面に荒々しい岩の間から「惣滝」の姿が確認できる。日本の滝100選にも名を連ねる落差80メートルの滝は遠目ではあるが見ごたえがある。
宿の大浴場は脱衣所・湯船ともに小ぢんまりとしているが、こちらも白濁した温泉が掛け流しになっていて、加温・加水・循環・消毒なし。温泉を楽しむには申し分ない浴場だ。それもそのはず、「樺太館」は日本秘湯を守る会の会員宿である。
食事は食事処「むつはな」にて。細かく年輪を刻んだ大木のテーブルに品数多く並ぶ食事。食前酒はブルーベリーワイン。
ヒラタケとセリの胡麻和え、ミズの煮もの、ネマガリタケやヤマブドウの葉の天ぷらなど地域色豊かな山菜を多用する。食後には自家製の干し柿がデザート。
山の恵みの多さと滋味深い味わい、目にも美しい繊細な盛り付けに宿の気遣いをひしと感じる夕餉。
朝食は鮎の甘露煮、湯豆腐、山菜の煮ものなど。食事のあとには淹れたてのコーヒーをいただける。
いい温泉、おいしい食事、おもてなし。登山客はもとより、温泉好きのリピーターが多いのも納得の秘湯の宿だ。
住所:新潟県妙高市大字関山6087
(小椚萌香)