東京・西麻布|衝動を創造した大型作品・没入型アートに直面する。大野修氏の個展「Bug-Fi」開催

東京・西麻布のオルタナティヴスペース・WALL_alternativeにて、大野修氏の個展「Bug-Fi」が開催されている。立体造形と音が融合した展示は、訪れる者を未知の感覚へ導く。

音楽家・梅原徹氏との協働によるサウンドインスタレーションも初披露。視覚と聴覚の双方を刺激する空間には、都市と環境の関係を新たに問い直す体験が広がっている。

Photo by Keizo Kioku

音と立体が呼応する新感覚の展示空間

西麻布という都市の一角に突如現れる非日常の空間。それが今回の「Bug-Fi」である。

会場に足を踏み入れると、まず迎えるのは高さ4メートルに及ぶ大型の立体作品。人工素材と楽器の残骸が重なり合い、まるで都市の断片が再構築されたような迫力を持つ。

Photo by Keizo Kioku

《Chunk》シリーズの新作や、ヴィンテージギターを思わせる《Cover》シリーズ、さらに3メートルのスケールを誇る《Frame》シリーズが並び、47点に及ぶ作品群が空間全体を満たしている。物質の存在感で訪れる人を圧倒しながら、作品間を流れる音で包み込み、視覚と聴覚を同時に覚醒させていく。

Photo by Keizo Kioku

Photo by Keizo Kioku

Photo by Keizo Kioku

Photo by Keizo Kioku

ブリコラージュが映し出すレジリエンス

大野修氏の創作の核には「ブリコラージュ」がある。プラスチックや廃材、使われなくなった楽器といった日常の断片を組み合わせ、新たな形を生み出す手法だ。

その背景には、ニューヨーク滞在時に直面したハリケーン・サンディや、2011年の震災で体験した都市の変貌がある。

破壊の痕跡を素材として取り込み、造形へと昇華する姿勢は、環境の変化を生き抜く力=レジリエンスを象徴する。単なるリサイクルではなく、無秩序を新しい秩序に変換する行為こそが大野氏の表現の根幹であり、作品に強度と説得力を与えている。

Photo by Keizo Kioku

五感を刺激する文化体験

今回の展示の特徴は、視覚と聴覚にとどまらない拡張性にある。音楽家・梅原徹氏との協働によるサウンドインスタレーションは、反射と共鳴を繰り返しながら空間を立体的に変容させ、まるで作品そのものが呼吸しているかのような没入感を生み出す。

Relational Steps_27.07.2023 / 2023

さらに、会場のバーでは、大野氏の故郷である福岡のワイナリーや地元食材と連動した特別メニューも展開され、味覚を通じても作品世界を体験できる仕掛けが整う。トークイベントや特別演奏も予定されており、訪れる者はアートの枠を超えた多層的な時間を過ごすことになる。

西農園トマトの生ハムロール ぶどう山椒とともに

「Bug-Fi」は彫刻と音が交錯する稀有な場だ。都市の記憶を再構築する大野修氏の作品群は、鑑賞者の五感を揺さぶり、新しい文化体験へと誘うだろう。

大野修 個展「Bug-Fi」
会期:9月3日(水)〜9月27日(土)※日曜定休、9月14日(日)は営業
時間:18:00~24:00
会場:WALL_alternative
所在地:東京都港区西麻布4-2-4 1F
入場:無料・予約不要
公式サイト:https://avex.jp/wall/exhibition/674

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000163.000065348.html

(Fumiya Maki)