能と現代演劇を融合させた英語能が、ふたたび日本の舞台に立つ。早稲田大学とUCLAによる国際連携プロジェクト「柳井イニシアティブ」が、8月に東京・喜多能楽堂で連続公演を開催。
再演となる『青い月のメンフィス』に加え、原爆開発者を描く新作『オッペンハイマー』は初公演。伝統と革新が交差する特別な五日間だ。
平和祈念日に重ねる、新作『オッペンハイマー』
今回初披露される英語能『オッペンハイマー(Oppenheimer)』は、原子爆弾開発を主導した科学者の葛藤と贖罪を描いた意欲作。
作者は能の研究でも知られるシドニー大学名誉教授で作家のアラン・マレット氏。原爆開発のリーダーであったオッペンハイマーの亡霊が、仏教的な因果律の中で罪を引き受けることを、不動明王に誓う姿を描く。
上演日は、広島・長崎の原爆投下を想起させる8月6日(水)と9日(土)。戦後80年という節目に、観客とともに平和への祈りを共有する機会となる。
再演『青い月のメンフィス』──エルヴィスの幽玄
一方、再演される『青い月のメンフィス(Blue Moon Over Memphis)』は、アメリカ人劇作家デボラ・ブレヴォートによる作品。エルヴィス・プレスリーの命日に彼の墓を訪れた女性が、月明かりの下で亡霊と邂逅する夢幻能だ。
デニム素材の装束や、エルヴィスを模した能面、謡に織り込まれたヒットナンバーなど、型にはまらない表現で高い評価を得た。2024年の東京・京都公演に続き、今回も字幕付きで再演される。
英語・仏語・日本語の多言語能楽祭
両演目の前には、日本語とフランス語で演じられる狂言や、日本語による舞囃子も披露。演じるのは、欧米を拠点とする国際的なパフォーマンス団体「シアター能楽」。能楽の伝統を尊重しつつ、言語や国境を越えて表現の可能性を拡げてきた団体だ。
チケットは、柳井イニシアティブの公式ウェブサイトで6月2日(月)13時より販売開始。
言葉と文化を越えて響き合う舞台の熱量を、会場で体感してみてはいかがだろうか。
英語能『オッペンハイマー』
日時:8月6日(水)18:30開演/8月9日(土)14:00開演
内容:舞囃子『敦盛』、狂言『口真似』、英語能『オッペンハイマー』
会場:喜多能楽堂
所在地:東京都品川区上大崎4-6-9
料金:3,000円または5,000円(台本・冊子付)
英語能『青い月のメンフィス』
日時:8月7日(木)・8日(金)18:30開演
内容:舞囃子『岩船』、狂言『寝音曲』、英語能『青い月のメンフィス』
会場:喜多能楽堂
所在地:東京都品川区上大崎4-6-9
料金:3,000円または5,000円(台本・冊子付)
公式サイト:https://www.waseda.jp/culture/news/2025/05/27/30002/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000065365.html
(山之内渉)