戦後美術の前衛グループで活動したアーティスト・森⼭安英氏。個展で見るその取り組みとは

福岡県の「OVERGROUND」にて、1960年代後半から福岡・北九州の地で前衛グループ「集団蜘蛛」の中核メンバーとして活動したアーティスト・森山安英(もりやま やすひで)氏の個展を開催。

期間は4⽉7⽇(金)〜5⽉28⽇(日)。絵画とは何であるかを改めて考えさせられるその独特な作品に注目したい。

「レンズの彼岸11」Oil on canvas, resin, H72.7 x W91.0 cm, 1999

「レンズの彼岸11」Oil on canvas, resin, H72.7 x W91.0 cm, 1999

あらゆる芸術表現を否定したアーティスト

森山安英氏は1936年福岡県八幡市(現・北九州市八幡東区)生まれ。現在も北九州市戸畑区在住のアーティスト。

1955年に佐賀大学特設美術科に入学したが、間もなく除籍となる。先行する前衛美術グループ「九州派」の強い影響を受けながら、1968年に地元作家たちとともに「集団蜘蛛」を結成。

ほどなくして3人のメンバーに少数精鋭化されると、既存の美術団体や権威、さらに同時代の前衛運動も標的に、あらゆる芸術表現を否定する過激なハプニングを繰り返した。

1970年には、福岡県立伝習館高校の教師処分に反対する運動に参加し、公然猥褻物図画陳列罪で逮捕され、裁判闘争は1973年まで続いた。その後、15年の長い沈黙を経て、1987年から銀一色の絵画作品の制作を開始し、現在に至るまで大量の絵画作品を残してきた。

初期作品は、全面銀色のオールオーバーな抽象絵画で、絵の具を流し込む技法が特徴であり、その後は、豊富な色彩やかたちの具象的絵画を主に制作している。*

絵具を流し込む独特の手法

今回の「森山安英 個展」では、森山氏の活動再開後の1989年から1999年にかけての10年間に制作された絵画作品を14点を発表する。

筆で描くのではなく、絵具を流し込むことでオールオーバーの画面を構成していく独特の手法により、「描く」という行為自体、あるいは絵画それ自体を根本から問い直している。

「光ノ表面トシテノ銀色11」Oil on canvas, resin, H194.0 x W162.0 cm, 1993

「光ノ表面トシテノ銀色11」Oil on canvas, resin, H194.0 x W162.0 cm, 1993

戦後の美術史を力強く駆け抜けた森山氏が、20世紀末に取り組み続けた絵画作品たち。今回の展示は、日本の美術史を再考するきっかけになるかもしれない。

森山安英 個展
開催期間:4月7日(金)〜5月28日(日)
会場:OVERGROUND
所在地:福岡県福岡市博多区美野島1丁目17-5-2F
時間:13:00〜19:00
休館日:火曜日・水曜日
OVERGROUND公式サイト:https://overground.asia/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000119320.html

(田原昌)

*宮川敬一監督作品「MORIYAMA」から引用