表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京にて、ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展開催中

ルイ・ヴィトン ジャパン社が、フォンダシオン ルイ・ヴィトン主催の「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として、エスパス ルイ・ヴィトン東京にて、ドイツ人アーティストのヴォルフガング・ティルマンス氏による「Moments of Life」展を6月11日(日)まで開催する。

‘Wolfgang Tillmans – Moments of Life’ exhibition at Espace Louis Vuitton Tokyo, 2 February 2023 – 11 June 2023

ヴォルフガング・ティルマンス氏の代表作が集結

ヴォルフガング・ティルマンス氏は、レイヴやゲイコミュニティのパーティーで身体の脆弱性や、くだけたポーズをとる友人たちの姿、長年にわたって私生活を撮り続けた個人の姿などを捉える。作品は大判のインクジェットプリントで、多くの場合は額装されずに展示されている。

ティルマンス氏は、写真をリアルな世界と直接結び付いた社会的芸術とみなし、対象を共感と共に描き出す。時代に注意を向けることによって、彼の作品は本質的な真理に到達し、肖像画、静物画、風景画といった伝統的なジャンルに立ち戻る。また、ティルマンス氏は写真技術を絶えず追求し続け、例えば、コピー機を使ったイメージの拡大や新たにフレーミングを行ったり、カメラの代わりに暗室で光源のみを使用して抽象的な写真を制作したりしている。

1992年以降、展覧会の構成も自ら手がけ、作品をグループごとにまとめて壁に吊るしたり、貼り付けたり、あるいはその場で決めた順番にテーブル上に配置したり、展示空間を、イメージの集合体が人間のコミュニティを反映する一種のラボとして捉える。

常にポートレートを撮り続けてきたティルマンス氏

被写体が親しい友人であれ、見知らぬ他人、あるいは著名人であれ、人為的な演出を避け、意図的に自発性に基づいた制作スタイルをとってきたティルマンス氏。作家が被写体の動きやファッションスタイル、態度を自然で流れるようなフレーミングで捉え、一人ひとりの個性を露わにすることによって、これらの作品に稀な心理的強さが宿される。

背後から撮影されたポートレート「Haircut」(2007年)は、被写体が特定できないがゆえに、一層の親近感をもたらされる作品だ。

「Torso」(2013年)は、タイトルが示すようにトルソを主題とし、古代彫刻にちなんでいて、人体のタイトなフレーミングによって、ミケランジェロの讃えた古代彫像「ベルヴェデーレのトルソ」が意識されている。

1986年以降、ティルマンス氏の作品にはセルフポートレートが時折登場するようになる。

「London Olympics」(2012年)は、一見すると何気ない瞬間を捉えたように見えるものの、実際には非常に複雑なコンポジションだ。このセルフポートレートには、作家自身が2ヶ所に写り込んでいる。前景に彼の脚が見え、後景ではベッドに横たわって鏡にカメラを構えていて、この鏡面には、フレーム外の光景が映し出されている。作品の圧倒的なサイズによって、見る者はその風景に没入するかのように感じるはずだ。

別のグループのワンシーンを切り取った「Summer party」では、エドゥアール・マネ氏の名作「草上の昼食」を彷彿させる。

ティルマンス氏の作品では重要な位置を占める静物画や、作品に頻出するテーマの自然の中でも、花を被写体とした写真の大半は、自身のスタジオで撮影され、写真と官能的な感覚の確かな結び付きを表現している。ティルマンス氏にとって、制作アトリエは生きることとアートが交差する展示空間でもあるのだ。

ポートレートから作家自身のスタジオで撮影された作品まで、ティルマンス氏が切り取る世界をゆっくり鑑賞したい。

エスパス ルイ・ヴィトン東京
所在地:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
会期:開催中~6月11日(日)
開館時間:11:00~19:00
休館日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準じる
料金:入場無料
※会場内の混雑防止のため入場を制限する場合がある
事前来館予約:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/point-of-sale/japan/espace-louis-vuitton-tokyo

(MK)

WOLFGANG TILLMANS – MOMENTS OF LIFE
Exhibition view at Espace Louis Vuitton Tokyo (2023)
Courtesy of Fondation Louis Vuitton
©Wolfgang Tillmans
Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton