箱根・ポーラ美術館にて水面&箱根仙石原の自然をテーマにした丸山直文「水を蹴るー仙石原ー」展を開催

「ポーラ美術館」の「アトリウム ギャラリー」にて、HIRAKU Projectの14回目・丸山直文「水を蹴るー仙石原ー」展を、1月28日(土)から7月2日(日)まで開催する。

丸山氏独特の画法による水面を描いた作品群に加え、箱根仙石原の豊かな森の取材から生まれた新作も必見だ。

「新作のためのイメージ」 2022年 Copyright the Artist. Courtesy of ShugoArts.

「新作のためのイメージ」 2022年 Copyright the Artist. Courtesy of ShugoArts.

丸山直文氏の作品を展示する「水を蹴るー仙石原ー」

「ポーラ美術館」のHIRAKU Projectは、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する展覧会シリーズ。第14回目の「水を蹴るー仙石原ー」では、国内外で数多くの展覧会を開催し、国内の主要な美術館に作品が収蔵される、日本を代表する作家・丸山直文氏を紹介する。

同氏は、1990年代の活動初期から、一貫して絵画を描き続けている。その画風は、カンヴァスを立てて描く、伝統的な絵画の制作法とは異なり、水を含ませた綿布を床に置き、水平な状態で作品を描くのが特徴。

にじみ・ぼかしを意図的に取り入れた画面の中で、かたちの境界は曖昧に揺らぎ、アクリル絵具の鮮やかな発色とともに、判然としない夢のような世界を生み出す。

Copyright the Artist. Courtesy of ShugoArts. Photo by Shigeo Muto

Copyright the Artist. Courtesy of ShugoArts. Photo by Shigeo Muto

水面を描くことで人類の不確かさを表現する作品群

例えば、水たまりを蹴り上げると、水面に映った静寂な世界が崩れる。そのように、人類を取り巻く環境はとても不安定で、一たび、災害・パンデミック・気候変動などが起こると、瞬時に世界が一変してしまう可能性がある。

今回の展覧会「水を蹴る―仙石原―」というタイトルには、そんな人類の不確かさに対する丸山氏の意識が顕れているという。

近年の丸山氏の作品には、制作の過程において「水」がとても重要な役割を担ってきた。本展示会では、水面を描いた作品群に加えて、箱根・仙石原の地をテーマに「ポーラ美術館」を取り囲む、豊かな森への取材から生まれた新作も発表する。

その一つが、湿潤な土壌でしか育たない、赤褐色の美しい幹肌が特徴的なヒメシャラの木々。手で触れると、極めて薄い幹皮を通して冷たい水を感じるこの木の感触は、さながら表面を薄いヴェールに覆われたかのような丸山氏の絵画のあり方を想起させる。

本展覧会の会場構成は、丸山氏と親交の深い建築家・青木淳氏が担当する。青木氏は、丸山氏の絵画からインスピレーションを得て、重ね合わせた布によるモアレを水面に見立てた会場構成を構想した。

© 吉場正和

© 吉場正和

箱根・仙石原は太古においては、湖の底にあったという。丸山・青木両氏が創り上げた、輝く薄いヴェールに包まれた展示空間は、水面を歩くような不安とともに、誰も知らない世界へと鑑賞者を誘う。

箱根の自然に溶け込むように建つ「ポーラ美術館」。そこに流れる凛とした時間の中で、丸山直文氏の芸術感を肌で感じてみてはいかがだろう。

HIRAKU Project Vol.14 丸山直文「水を蹴るー仙石原ー」
会場:ポーラ美術館 「アトリウム ギャラリー」
所在地:神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭1285
会期:1月28日(土)から7月2日(日)
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:会期中無休 ※悪天候による臨時休館あり
入館料:大人1,800円(税込)
公式サイト:https://www.polamuseum.or.jp/

(高野晃彰)