新たな「旅文学」の金字塔、沢木耕太郎による大型ノンフィクション『天路の旅人』がついに発売

沢木耕太郎氏のノンフィクション『天路の旅人』が、10月27日(木)に新潮社より刊行された。

掲載誌『新潮』8月号が完売するほどの反響を得て、単行本の発売前から大きな話題を呼んだ同作品。最長編にして「旅」の神髄に迫る傑作ノンフィクションだ。同作品の魅力について紹介したい。

新たな「旅文学」の金字塔!『天路の旅人』

沢木氏の著作史上最長にして最高、新たな「旅文学」の金字塔『天路の旅人』のあらすじを紹介する。

第二次大戦末期。チベット仏教の蒙古人巡礼僧になりすまし、敵国のスパイとして中国大陸の奥深くまで潜入した青年・西川一三。彼は、1945年の第二次大戦敗戦後も蒙古僧に扮したまま旅を続け、チベットからインド亜大陸までの未知なる世界への歩みを止められずにいた。

そして1950年にインドで逮捕され日本に戻るまでの8年間、蒙古人として生き続ける。その果てしない旅と人生を西川一三氏の著作と沢木耕太郎氏の徹底的なインタビューをもとに描き出した作品だ。

執筆までに要した沢木耕太郎氏の25年の長い旅路

同作は、沢木氏がこの希有な旅人のことをどうしても書きたいとの想いから、25年の歳月をかけて結実させた作品だ。沢木氏はあとがきに以下のように記している。

「彼、西川一三の旅も長かったが、その彼を描こうとする私の旅も長かった。彼に会ったのを発端とし、書き上がったときを終結とすれば、発端から終結まで二十五年かかったことになる。

西川一三を書く。しかし、その彼が自らの旅について記した『秘境西域八年の潜行』という書物がありながら、あえて彼の旅を描こうとするのはなぜなのか。
私は、何度も、そう自問した。そして、やがて、こう思うようになった。私が描きたいのは、西川一三の旅そのものではなく、その旅をした西川一三という希有な旅人なのだ、と」

その想いが所々にあふれ出しているのが同作の魅力で、読者を惹きつけるのだろう。

沢木耕太郎氏

沢木耕太郎氏

作品の旅の終わりには何が待っているのか。早く手に取って読みたくなる作品だ。

「天路の旅人』
著者名:沢木耕太郎
発売日:販売中
判型:四六判ハードカバー
本体定価:2,640円(税込)
URL:https://www.shinchosha.co.jp/book/327523/
無料試し読み:
https://www.shinchosha.co.jp/book/327523/preview/
https://ebook.shinchosha.co.jp/book/E055361/

(下嶋恵樹)