茨城県水戸市の高藏蒸留所(TAKAZO Distillery)が稼働。約60年ぶりのウイスキー造りを再開

江戸時代から続く総合酒類メーカーの明利酒類が、9月26日(月)に「高藏蒸留所|TAKAZO Distillery」を立ち上げた。原酒の熟成過程をみんなで楽しむ、ファン参加型の新しいウイスキー蒸留所を目指す。

一度は断念したウイスキー造りを再開

同社は、江戸時代末期の安政年間に、加藤高藏が新潟県より酒造り杜氏として水戸に入り創業した、加藤酒造店が前身だ。明利酒類初代代表・加藤高藏によって、1952年からウイスキー造りをしていたが、工場の火災によって免許を返納、以来、ウイスキー造りを断念。

今回、約60年ぶりにウイスキー製造免許通知書を取得した。創立時の想いを引き継いで、新たな蒸留所を「高藏蒸留所|TAKAZO Distillery」と名付け、今月から発酵と蒸留を開始。新たに蒸留されるウイスキーは、来年春以降の販売を計画している。

ウイスキー造りに活きる“発酵”と“蒸留”の知見と技術

同社は、全国1,000以上の酒蔵の中でも、自社で酵母を開発培養し、全国の酒造に提供している数少ない民間企業だ。酒の発酵の重要要素である酵母の開発を自社で行い、さまざまな酒の発酵過程を分析してきた知見は、ウイスキーづくりにも活かせると考えている。

さらに、これまで生産してきた焼酎やジン、ウォッカなどの蒸留酒での経験も、今回のウイスキー事業参入の後押しとなった。総合酒類メーカーとして、発酵と蒸留に向き合い続けてきた知見や技術を活かしながら、ジャパニーズウイスキーの名に恥じないウイスキー造りへ歩みを進めた。

モルトウイスキーとグレーンウイスキーの製造開始

蒸留所では、同社で蒸留するシングルモルトとスコットランドのモルト原酒等をブレンドし、さまざまな樽で後熟したウイスキーの製造を予定している。ブレンディッドモルトウイスキーの原酒については、どのような原酒を入れているか、なぜその原酒を選んだかなどを開示。自社蒸留するシングルモルトに合った原酒を選定し、ブレンドしていく。

また、ウイスキーの味だけではなく、時間による変化も楽しんでほしいとの考えから、蒸留所での体験や試飲会などのイベントも行う予定だ。

ウイスキーの発酵・蒸留を開始

初留・再留の蒸留機には、内部に銅を組み込み、硫化物の除去やクリアな仕上がりを目指す。またマッシュタンは海外で組み立て、製造テストを行い、新しく搬入した。

同蒸留所では麦芽400kgで仕込み、原酒200Lを得る規模感で、まさに“クラフトウイスキー”として発酵・蒸留を開始。

樽は、アメリカンホワイトオークのバーボン樽と、シェリー樽を選定。今後は、樽のバリエーションを増やしていき、さまざまな種類の原酒のブレンドの可能性を追求し続けていく予定だそうだ。

9月末から、大麦麦芽によるモルトウイスキーの製造と、酒蔵の強みを活かした米原料のグレーンウイスキーの製造を開始。まずは、シングルモルトのNewPotの発売、そしてスコットランドのモルト原酒とブレンドした、ブレンディッドウイスキーの製造・販売を予定しており、2023年春ごろに初回のリリースができるよう準備を進めている。

復活した高藏蒸留所から生まれる新しいウイスキーが、今から楽しみだ。

公式サイト:https://www.meirishurui.com

(田原昌)