広告デザインの一線を走り続けてきた男の、“デザインの遺産”を目にできるまたとない機会が到来。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは現在、日本の広告デザイン界を牽引してきた細谷巖氏の展覧会「細谷巖 突き抜ける気配 Hosoya Gan-Beyond G」を開催中だ。
広告デザイン界を牽引してきた細谷巖氏
1935年9月2日生まれの細谷巖氏は、本展スタートの3日前に87歳の誕生日を迎えた。
終戦から8年後の1953年4月、細谷氏は神奈川工業高校工芸図案科を卒業してクリエイティブエージェンシーのライトパブリシティに入社し、2022年現在、同社の代表取締役会長を務めている。
振り返れば、なんと69年間もの長い年月、細谷氏は同じ会社で、しかも第一線でアートディレクター、グラフィックデザイナーとして、また東京アートディレクターズクラブの会長として、日本の広告デザイン界を牽引してきた。
デザイナーたちの感性を呼び起こす展覧会
細谷氏は、1955年の日宣美(日本宣伝美術会)展出品の鮮烈なデビュー作「Oscar Peterson Quartet」をはじめ、目の覚めるような広告やエディトリアルデザインを矢継ぎ早に生み出してきた。
写真を90度回転しバイクが落下するようなスピード感を表現した「ヤマハオートバイ」ポスター(1961年)、日本の伝統的な建築や風物にみられる様々な「かたち」を集めた書籍『日本のかたち』(美術出版社 1963年)、日本刀の刃先がアップになった緊張感あふれる『アサヒカメラ』(1962年11月号)の表紙など、粋の良い写真や素材などを自由自在に使いこなす。
細谷氏はその名の通り、厳しい切れ味のある作風と格調高い一徹な創作精神によって、広告が真に「創造的」であるかどうか、「文化的」であるかどうかという新たな次元を、日本で初めて切り開いたパイオニアと言えるだろう。
そんな細谷氏の半世紀以上前の珠玉の「デザインの遺産」を再度呼び起こすのが同展だ。
展覧会のタイトルの通り、細谷氏の「閃(ひらめ)く新しい世界へ通じる、既存の皮膜を突き破る力」を会場で体感してみては。
細谷巖 突き抜ける気配 Hosoya Gan-Beyond
期間:開催中〜10月24日(月)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー
所在地:東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル
開館時間:11時〜19時
休館:⽇曜・祝⽇
ギンザ・グラフィック・ギャラリー公式WEBページ:https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/
(IKKI)