芸術の秋は京都へ、最後の印象派と呼ばれたシダネルとマルタンの絵を見に行こう

19世紀末から20世紀前半にかけてフランスで活躍したアンリ・ル・シダネル(1862-1939)とアンリ・マルタン(1860-1943)の2人の巨匠の画業を振り返る展覧会「シダネルとマルタン展」が開催される。

会場は、開館25周年を迎える京都の美術館「えき」KYOTO(京都駅ビル内)で、会期は9月10日(土)から11月6日(日)まで。7月30日(土)から前売券を発売する。

「最後の印象派」と呼ばれたシダネルとマルタン

共に印象派、新印象派の流れを汲みつつ、象徴主義など同時代の表現技法を吸収しながら幻想的な主題を扱い、生活の情景や身近な人々を親密な情感を込めて描くアンティミスト(親密派)としても知られているアンリ・ル・シダネルとアンリ・マルタン。

2人は1891年の最初の出会い以降、生涯にわたり親交を深めたが、シダネルは北フランスで薄明かりに包まれた穏やかな光を、マルタンは南フランスで陽に照らされた明るい光を描き出し、それぞれ独自の画風を築いた。

展覧会「シダネルとマルタン展」では、これまで日本で紹介される機会の少なかった2人の画家の画業を9つの章に分けて紹介。光と色彩に彩られた作品を鑑賞できる。

象徴主義と習作の旅、家族と友人の肖像

19世紀末、ヨーロッパ全土で象徴主義が流行した。世紀末世界における不安やメランコリーなど、観念的な世界を表現するこの傾向に対し、2人の作品にもその影響が表れている。

印象派をはじめとした19世紀の風景画家たちは、各地を旅してその地の風景を描いた。彼ら印象派の末裔でもあるシダネルたちも各地で情景の数々を描き、パリに戻って完成作に仕上げていく。

シダネルとマルタンは、身近な人物を愛情豊かな眼差しで描き出したことから、「アンティミスト(親密派)」とも呼ばれた。

シダネルは1900年代から画中に人物を描かなくなったが、家族や友人など身近な人々は好んで描き続けた。一方、マルタンは壁画の中に家族や友人の肖像を描き込み、自身の創作に親愛と友情が必要であることを示した。

アンリ・ル・シダネルの生涯

アンリ・ル・シダネルは、インド洋モーリシャス島に生まれ、ダンケルクで育つ。1882年に国立美術学校(エコール・デ・ボザール)に入学し、アレクサンドル・カバネルに学ぶ。

パリの喧騒から離れるために訪れたフランス北部の小さな港町エタプルでの滞在をきっかけに自身の画風を確立し、画壇で評価を得るようになる。

シダネルは1901年に小さな田舎の村ジェルブロワを見出すと、1904年に家を購入し、本格的に制作の拠点を構えた。ジェルブロワの穏やかな雰囲気やバラの咲き誇る庭はシダネルにとって格好の題材となり、シダネルの真骨頂ともいえる作風が確立された。

1909年から晩年にかけて、シダネルは息子たちの教育のためにヴェルサイユにも居を構え、季節の良い時期はジェルブロワに滞在し、そのほかの時期はヴェルサイユで過ごした。かつての宮殿や庭はシダネルにとって格好の題材となり、散歩道でもあった公園を素朴で身近な情景として表した。

アンリ・マルタンの生涯

アンリ・マルタンはトゥールーズに生まれ、国立美術学校でジャン=ポール・ローランスに学ぶ。南仏のラバスティド・デュ・ヴェールはマルタンの画風が確立する上での重要な場所となり、特に主要な着想源であった別荘のマルケロルの庭は、絵画の題材にすることを念頭にマルタン自身が造った空間として有名だ。

マルタンは、1911年にラバスティド・デュ・ヴェールに近いサン・シル・ラポピーに、1923年にコリウールに家を購入して新たな拠点として同地の情景を描き、南仏の陽光の元でもっともマルタンらしいといえる作品の数々を残した。

また、マルタンは大画面の装飾壁画にも優れ、フランス国務院をはじめとする多くの公共空間に作品を残している。

身近なものを情感豊かに描いたシダネルと、風景や人物像を象徴主義的な雰囲気の中に描いたマルタンの美しい“光と色彩”に触れてみたい。

シダネルとマルタン展
会期:9月10日(土)~11月6日(日)※会期中無休
会場:美術館「えき」KYOTO
所在地:京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル 東塩小路町 ジェイアール京都伊勢丹7階隣接
開館時間:10:00~19:30(入館締切閉館30分前)
入館料:一般/1,100円(900円)
前売券販売:7月30日(土)から9月9日(金)まで
販売場所:当館チケット窓口(休館日を除く)、京都駅ビルインフォメーション、チケットぴあ、ローソンチケット。
公式HP:https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/

(MK)

※入館料は税込
※新型コロナウイルス感染症の状況により、開館時間は変更する場合があり。
※( )内は前売料金。
※「障害者手帳」を提示の本人と同伴者1名は当日料金より各200円割引。