1922年、東京・浅草に生まれた山下清。18歳で放浪の旅を始めるや、旅先での記憶に残った風景を緻密で色鮮やかな貼絵で描き「放浪の天才画家」と称された。
神戸ファッション美術館では、「生誕100年 山下清展ー百年目の大回想」と銘打ち、6月25日(土)~8月28日(日)の期間に特別展を開催。49歳の若さで亡くなった天才画家の生涯を辿る。
「ちぎり絵」との出会いが天才画家・山下清誕生のきっかけに
清は幼少期に重い消化不良を患い、完治後に軽い知的障害となった。そして10歳頃から知的障害が顕著になり、周囲からイジメに合うようになる。12歳で八幡学園に入園した清は、学園教育の一環として「ちぎり絵」に出会った。そこで画才を開花させ、「貼絵」へと発展させていったのだ。少年期に創作した初期の傑作が生まれたのもこの頃である。
1940年、清は18歳の時に八幡学園から突然姿を消し、日本中を放浪し始める。学園での生活から自由になりたかったことが契機となり、兵役検査から逃れるために放浪に出たのだ。
気ままな放浪を続けていた1953年、31歳の時に、アメリカのグラフ誌『ライフ』の記者が、彼の少年時代の「貼絵」を見かけたところ、その天才ぶりに驚き、放浪中の清を捜し始め、新聞の捜索記事によって翌年に鹿児島で発見される。
清は、放浪中には絵を描いていなかった。彼は驚異的な記憶力の持ち主で、数ヶ月から数年に渡る放浪生活中に見た景色などを克明に記憶しており、放浪から戻ってくる度にそれらを思い出して作品を制作した。作品は貼絵の他に、油彩や水彩画、ペン画、陶磁器の絵付けなど、様々な手法で残されている。
作品はもちろん、彼の話す言葉や人柄で多くの人を惹きつけた清は、1971年に49歳で永眠。花火のような一瞬の輝きで昭和という激動の時代を駆け抜けた人生だった。
代表作「日本の原風景」や初公開作品を含む約170点を展示
本展覧会では、「日本の原風景」とも言われている山下清の代表的な貼絵を中心に、独特な手法で描かれた油彩、水彩画、ペン画、少年期の貴重な絵など、初公開作品も含めて約170点を展示。
展示は全5章で構成され、1章で「山下清の誕生―昆虫そして絵との出合い」、すなわち幼少期にフォーカス。2章は「学園生活と放浪への旅立ち」、3章は「画家・山下清のはじまり―多彩な芸術への試み」、4章は活躍の場を広げた「ヨーロッパにて―清がみた風景」、そして5章は「円熟期の創作活動」と、人生の節目ごとにテーマを設けている。
サブタイトルで「百年目の大回想」とあるように、山下清像を再検証する本展覧会。フィクションではない芸術家としての山下清の真の姿を、本展を通じて感じたい。
生誕100年 山下清展ー百年目の大回想
期間:6月25日(土)~8月28日(日)
会場:神戸ファッション美術館
所在地:兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-9-1
休館日:月曜日、7月19日(火)※7月18日(祝・月)は開館
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
観覧料:一般1,000円
公式HP:https://www.fashionmuseum.jp
※開催期間は新型コロナウイルスの影響で変更する場合あり
(IKKI)