宮城峡蒸溜所|被災した土地で栽培した大麦「希望の大麦」でウイスキーを製造

東日本大震災からの復興として栽培されていた麦を使い、ウイスキーが造られる。そのプロジェクトを紹介したい。

ニッカウヰスキーは、東日本大震災で被災した土地で栽培した「希望の大麦」を使って、2月よりニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所でウイスキー原酒の製造を開始した。

宮城峡蒸溜所で「希望の大麦」を原料にした製造を開始

地域に貢献するウイスキー造り

今回原料として使用する「希望の大麦」は、東松島みらいとし機構が主導する「希望の大麦プロジェクト」で収穫した大麦だ。グループ会社であるアサヒビールモルトのもとで製麦作業を行った麦芽約30tを、本年分として仕込んだ。

今回のウイスキー原酒製造の取り組みは、「希望の大麦」の収穫量が増え、新たな使用用途や販売先を検討していたHOPEと、地域の原料を原酒製造に使用することで地域に貢献したいと考えたニッカウヰスキーの思いが合致したことで実現。本年からニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所で仕込みを開始し、将来、ウイスキー原酒としての活用を目指すことで、東北の活性化に繋げていく。

津波被災土地を活用するプロジェクト

「希望の大麦プロジェクト」は、2011年の東日本大震災で被災した宮城県東松島市の沿岸部の津波被災土地を活用して、大麦を栽培することで、土地の有効活用を目指すもの。

これまで同プロジェクトでは、大麦の栽培面積や生産量を拡大し、大麦を活用した菓子やクラフトビールなどの商品化を通して、東松島市の産業発展に取り組んできた。

「希望の大麦プロジェクト」これまでの歩み

宮城県東松島市で復興事業に関する中間支援組織であるHOPEに派遣されたアサヒグループの社員が、被災地の人々が抱える悩みをヒアリングすると、「被災した土地を有効活用できないか」という声が上がった。この課題を議論していく中で生まれたのが「希望の大麦プロジェクト」だ。この取り組みは、ビールや飲料などの原料である大麦を、海水を被って被災した広大な土地で育てるという挑戦だった。

収穫量を増やしていく一方で、2015年からは収穫した大麦の商品化に向けて動き出した。まずは洋菓子への加工が実現し、クラフトビールの製造も決定。「希望の大麦」を使った初めてのクラフトビール『GRAND HOPE(グランドホープ)』が、宮城県のやくらい地ビール製造所から発売され、好評を博した。また、「隅田川ブルーイング」では、「希望の大麦」を使ったクラフトビール『希望の大麦エール』を醸造している。

復興を目指して育てた大麦で作るウイスキー、心して味わいたい。

ニッカウヰスキー:https://www.nikka.com

(田原昌)