花王のパーソナルヘルスケア研究所は、歯みがき時に口から飛び散り落下する飛沫の様子と歯みがき行動の関係について調査を行った。
新型コロナの感染状況が懸念されるいま、飛沫感染対策は日々の心がけが重要だ。ここではその結果から効果的かつ衛生的な歯みがきの仕方を紹介する。
■インフルエンザや新型コロナなどの感染対策にも
歯みがきは、口腔内を清潔に保つために重要だが、昨今、歯みがき時に発生する落下性飛沫(以下、飛沫)について、ウイルス感染のリスクを高める可能性が指摘されている。
しかし、歯みがき時の飛沫と歯みがき行動について定量的に解析した例はない。
そこで花王は、歯みがき時に飛び散り落下する飛沫の様子(飛沫動態)とそれに影響する歯みがき動作の関係を明らかにし、どのようなみがき方をすれば飛沫量を抑制できるのかを調査した。
■飛沫動態の解析(ヒト試験)
成人男女20名に普段と同じように歯みがきをしてもらい、その様子を微粒子可視化装置で撮影し(図1)、得られた画像から飛沫の量と飛距離の解析を行なった。
その結果、全ての被験者に共通して、足元から半径50㎝以内の左右に45°(計90°)のエリアに飛沫が最も多く飛散した。また、最大で足元から179cm離れたところにまで飛沫が達した被験者も。
次に、飛沫の多い人と少ない人の歯みがき動作に着目。
すると、みがく際に口を開けている時間が短い人、歯ブラシを動かす幅(ストローク幅)が小さい人で、飛沫量は顕著に少ないことが確認できた(図2)。
さらに、飛沫量が多い歯みがき動作を行なう人でも歯磨剤(ペーストタイプ)を使用することで飛沫量が少なくなった。
■飛沫量の定量解析(モデル試験)
次に、歯ブラシの動かし方と飛沫量の変化を定量的に計測するため、歯ブラシの動きを制御できる機械を用いて試験を行なった。
試験では、ステンレス製の半円柱で作成した疑似歯モデル上で、歯ブラシのストローク幅、速さ、荷重、歯磨剤有無の条件を変えてブラッシングした(図3)。
その結果、ストロークの速さと荷重は飛沫量に影響を及ぼさなかった。
一方、ストローク幅を30mmから15mmと短くすると飛沫量は顕著に減少(図4)。さらに、ストローク幅30mmの場合でも、歯磨剤を使用することによって飛沫量が顕著に減少した(図5)。
歯磨剤を使用した場合は、口中で歯磨剤が泡立つことによって唾液などの液粘度が増加し、飛沫が飛びにくくなったと考えられる。
今回の調査結果をもとに、飛沫を抑制するには以下の点に留意することが大切といえる。
・歯磨剤を適量使う
・口を閉じてみがく
・歯ブラシを小刻みに動かし、歯を1本ずつみがくようにする
・複数人で歯みがきをする場合は、2m程度間隔をあける
・歯みがき後は、周囲を衛生的に保つために消毒剤などを用いて清拭する
毎日の心がけで、身近な環境での感染リスクが軽減されるかもしれない。
(hachi)