建築マニア必読!建築の新たな地平を切り拓く「デジタル職人魂」を紐解く書

話題の建築を実際に見る以上に深く知るための一冊が発行される。

■4色のインクで印刷したモノトーンの書籍

編著・押野見 邦英氏、撮影・中道 淳氏(ナカサアンドパートナーズ)、デザイン・塩谷 嘉章氏(SHIOYA Tokyo)の体制で制作、AGBが編集協力を行った書籍『サーフェスデザイン&テクノロジーの現在』が8月31日に彰国社より出版。

編者の押野見 邦英氏は、1941年東京都生まれ。元芝浦工業大学客員教授。現在,k/o design studio主宰。代表作に「八重洲ブックセンター」(1978年),「大阪東京海上日動ビルディング」(1990年),「資生堂湘南研修所」(1997年),「洗足学園音楽大学 シルバーマウンテン・eキューブ」(2013年)などがある。

撮影はナカサアンドパートナーズの中道淳氏が全面的に担当。カラー写真が多い建築雑誌の中で敢えてモノクロームを基調とした構成とし、建築家の意図した「デザイン」「質感」を表現することに注力した。

図面は施工図を基に、彰国社編集部、アートディレクター塩谷嘉章氏が編集を担当。写真同様のトーンとなるよう黒地に対する白線の構成とし、建築図面が本来持つ美しさの表現を追求した。

上述の通り本全体はモノトーンでありながら4色のインク(部分的にシルバーの計5色)を用い、写真集に引けをとらない再現性と、印刷物ならではの質感も追求し、本=オブジェクトとしての存在感を際立たせている。

■AGBのデジタル・クラフトマンシップに迫る

(本編より)

内田祥哉先生の著作『ディテールで語る建築』(彰国社,2018年)の中の「ポツ窓から柱間装置への60年」で「ヨーロッパの建築は外観,つまり姿の設計が主流だと言えます」と指摘されているように,日本の建築は長いこと外観といえば,柱間のデザインがエンジニアリングの要素とともに語られることが多く,近年になってようやく姿という建築全体の把握が問題とされるようになったものと思われる。大袈裟に言えば,建築のサーフェスデザインやテクノロジーという新たな概念の登場である。本特集では,そうした日本では認知度が低いサーフェスデザインやテクノロジーの言わば黎明期を今日まで支えてきた旭ビルウォール(以下,AGB)が,建築家とともに手掛けてきた最近の作品例を,その表現はもとより,建設インダストリー側の用語であるDfMA(Design for Manufacturing and Assembly)の観点からも解読してみたいと思う。
『サーフェスデザイン&テクノロジーの現在』

1990年設立、GRC(ガラス繊維補強セメント)の設計・製造・施工事業よりスタートし、建築材料に対する知見を高めつつ、現在では建物全体の美的および技術的性能において最も重要な要素の1つである『ファサードエンジニアリング』を中心事業としている「AGB」。

本書は、「AGBのデジタル・クラフトマンシップ」という観点から、「Louis Vuitton Maison Osaka Midousuji」「GINZA SIX House of Dior Ginza」「すみだ北斎美術館」「資生堂銀座ビル」「上越市立水族博物館 うみがたり」「大分県立美術館(OPAM)」「ミキモト銀座本店」「金沢海みらい図書館」など18の建造物を紹介している。

建築マニアは手元に置いておくべき一冊になりそうだ。

『サーフェスデザイン&テクノロジーの現在』

仕様:188ページ
定価:本体3,400円+税10%

(冨田格)