人馬が耕し作った酒米が生み出した日本酒を紹介しよう。
新潟県中魚沼郡津南町の「津南醸造」は、同じく津南町の「三馬力社(さんばりきしゃ)」と、昨年4月から馬耕による日本酒造りプロジェクトをスタートした。
その記念すべき第1作目「田人馬(TA-ZIN-BA)白」が5月13日に世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」2021のSAKE部門にて銀賞を受賞。
「田人馬 白」は、馬耕によって生み出された唯一無二の米を使い、津南醸造が磨きの技を生かし、山間に流れる清流や美しい雪の情景を残しながらも雪国に生きる力強さを表現した純米大吟醸だ。
■伝統文化を継承した唯一無二の日本酒「田人馬」
「三馬力社」は馬搬、馬耕などの畜力を生かした農林畜産業の技術研修・指導などの活動を行い、伝統技術の継承発展と、広く持続可能な社会に寄与する地元企業。
途絶えつつある馬搬・馬耕の技術を継承する、数少ない馬方・岩間 敬氏を中心に、新潟県津南町で“馬耕”による日本酒作りをしている。
馬が人とともに田畑を耕し、その土地の草を食み、馬糞は肥料となって田んぼに還る。
田・人・馬が三位一体となって育てた無農薬の酒造好適米「五百万石」を使用し、日本の原風景の素晴らしさと伝統文化を世界へ届けられる唯一無二の日本酒「田人馬」が誕生した。
ワインの世界では、地の味を最大限に活かす土壌を「テロワール」と呼ぶが、山水の恵みをたっぷりと受け、馬耕を繰り返すことで土本来の味わいを蓄えた土壌は、まさに日本が世界に誇る“ジャパニーズ・テロワール”。
「田人馬」は、この“ジャパニーズ・テロワール”から生まれた米の特徴を生かして生まれた日本酒だ。
■発売前に贈られた快挙
「IWC」は毎年ロンドンで行われる”世界でもっとも大きな影響力をもつ”といわれるワインのコンテスト。厳格なIWC審査プロセスにより、すべてのワインを「ブラインド」で評価し、スタイル、地域、ヴィンテージへの忠実度を審査する。
審査チームには、国際的なワイン業界の専門家やインフルエンサー、商業的意思決定者、バイヤー、MWが一丸となって、コンテストに参加している52のワイン生産国から毎年最高品質のワインを見つけている。
「田人馬(白)」は、発売前に国際的な評価をえたことになる。
■馬と人がともに働く機会の創出に挑戦中
「三馬力社」は、馬方である岩間 敬氏によって2020年に設立された。岩間氏は23歳頃から馬搬に興味を持ち、遠野で当時現役だった菊池盛治氏・見方勝芳氏の2人のベテラン馬方に師事し技術を習得。
農林業に従事しながら、馬搬・馬耕技術の後世への継承と“はたらく馬”との暮らしを広く紹介することを目的に、「一般社団法人馬搬振興会」を設立。代表理事として全国で技術指導、普及啓発活動を行っている。
今回のプロジェクトに挑戦するとともに、西アフリカでの馬耕指導をはじめ、畜力活用技術指導による国際貢献にも尽力している。
人と馬が一緒になって作り上げた日本酒、その味わいを試してみたいものだ。
公式サイト:https://tazinba.jp/
(冨田格)