ニューノーマルによる行動変化で「デジタル認知症」のリスク高まる

ニューノーマルな生活は「デジタル認知症」のリスクが高まる、という気になる調査結果が発表されたので紹介しよう。

■「ニューノーマルと認知症に関する意識調査」を実施

アクサ生命は、20代~60代の男女1,000名を対象にウェブアンケートで「ニューノーマルと認知症に関する意識調査」を実施(2020年12月)した。

■他人事ではない気になる調査結果

コロナ禍により、外出自粛や新しい生活様式「ニューノーマル」に沿った行動では、以下のような変化が起きている。

・「巣ごもり」により運動機会は減少傾向
・食事の買い置きによって栄養が偏りがちに
・対面コミュニケーションの減少により脳の認知機能が低下傾向
・テレビなど受動的なメディアとの接触が増加、暗いニュースにより気持ちが低下し、ストレスが増加

これらは認知症のリスクを高める要因と合致する。

特に現役世代においては、デジタル認知症「スマートフォンやパソコンなどデジタル機器への依存によって、記憶力・集中力・注意力の低下や、言語障害といった認知症に似た症状がでること」の増加が懸念される。

「アクサの脳トレ」を監修するNeU取締役CTOの川島隆太博士は、「対面コミュニケーションの減少は、脳の前頭前野の活動が低下する懸念がある」とし、「長期的視座に立つと認知機能の低下の懸念は増加していく可能性が高い」と指摘。

また、「テレビやスマートフォンなどの長時間視聴は、前頭前野の血流が低下し、働きに抑制がかかり、脳の衰えを加速させる懸念がある」と示唆している。

■前頭前野を活性化させるには、音読や会話、調理などがおすすめ

認知機能の維持・向上には、「頭を使うことで脳の前頭前野の血流が上昇(=活性化)することが重要」ということが、研究からわかっている。

川島博士は、「前頭前野をしっかり活性化させるには、適度な負荷が重要でリラックスした状態では活性化しないと考えられています。たとえば、音読をする、簡単な計算問題を全力で解く、調理をする、楽器を演奏する、人と対面で会話をするなど、目的をもって能動的に脳を使うことで、適度な負荷がかかり認知機能の維持・向上につながります。」との見解を示す。

■前頭前野を使わない状態は認知機能の低下を招く

一方、テレビやスマートフォンなどインターネット端末での「動画視聴」や「SNS」の利用は、視覚にかかわる「後頭葉」と、聴覚にかかわる「側頭葉」ばかりが使われ、前頭前野の血流はむしろ低下して働きに抑制がかかり、ぼーっとした状態になる。

この、ぼーっとした前頭前野を使わない状態が毎日続くと、認知機能が次第に低下し、長期的には認知症リスクを高めることが懸念されるという。

■コロナ禍で孤独感を感じる人が増えている

また同調査結果によると、コロナ禍前と比べて、「孤独感」を感じることが増えた人は4人に1人、「ストレス」を感じることが増えた人は約半数にものぼっている。

これについて川島博士は、「長期にわたるストレスや強度のストレスを受けると、記憶を司る海馬など脳に悪影響を及ぼすことがわかってきました。コミュニケーションに関する行動の減少以外に、このようにメンタル面からも認知症のリスクが高まっていることが懸念されます」と指摘している。

調査結果から、長引くニューノーマルが私たちの脳に与える悪影響が可視化された。挙げられた問題点を意識し、生活スタイルを改善していくことでデジタル認知症を予防する必要性を感じる。

最後に川島博士からのメッセージを紹介しよう。

「新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や行動制限で、脳の機能の維持に大切な有酸素運動やコミュニケーションの機会が減り、脳の機能低下が懸念されています。今回のアンケートからも、脳にマイナスな行動が増えるなどの変化が起きていることがわかりました。このままの生活スタイルが定着すると、脳の衰えを加速させる恐れがあります。

自宅で有酸素運動をしたり、在宅勤務でも同僚とのコミュニケーション方法を工夫したり、頻度も意識して、脳の機能を維持することを心がけてください。効果的に脳を鍛えるためには、1日10分、前頭前野を活性化させる脳トレも有効です。」

ニューノーマルの認知症対策のために: https://www.axa.co.jp/prospect/brain-training/dementia 

(冨田格)