老舗の酒蔵が、低迷期の続く日本酒業界に「一滴」を投じる新ブランドを発表した。
■アフターコロナの世界の「渇き」を癒す慈雨のような日本酒
大正元年(1912年)創業、神奈川県伊勢原市丹沢大山のふもとにある吉川醸造。麹造りの段階から最小単位の手造りによる蓋麹法の採用など、故杉山晋朔博士の醸造技術に基づいた丁寧で繊細な酒造りには定評があり、神奈川県下では「菊勇(きくゆう)」の銘柄で知られてきた。
吉川醸造は新ブランド「雨降(AFURI)」を発表、『かすみさけ』『山廃純米』などの日本酒を4月17日(土)より数量限定で発売する。
神奈川県の北西部に位置する丹沢大山は、水の良さとその豊富さで知られている。周辺が晴れていても山頂には雨が降っていたことから「雨降山(あふりやま)」と呼ばれ、古来「雨乞い」信仰の中心地となって来た。
また、国内屈指のパワースポットとしても名高い大山阿夫利(あふり)神社は約2200年前に創建され、大山祇大神は酒解(さけどけ)神、つまり酒造の神として毎年酒祭が行われるなど、酒造に縁の深い神社だ。
丹沢大山(雨降山)のふもとにあり、その地下伏流水を仕込み水として使用する酒蔵の新ブランド「雨降」。その名には、アフターコロナの世界の「渇き」を癒す慈雨のような存在のお酒に育って欲しいという願いも込められている。
■専門家の誰もが驚く仕上りの自信作
歴史は実直に伝承し、温かみのある蔵の佇まいも残しながら、その上で革新を行うという吉川醸造。
3本の井戸から、日本国内では希少な硬水(硬度150)である丹沢大山の地下伏流水を汲み上げて日本酒を醸している。
カルシウムやマグネシウムなどの天然ミネラルをバランスよく含む反面、発酵コントロールが難しい清冽な硬水を吉川醸造では「天の授かりもの」として、歴代杜氏や蔵人が長年培ってきた特殊な技法のもとで完全に手作業の酒造りを行っている。
現在の日本酒造りでは、米の表面を相当量削る(大吟醸では米の50%以上と規定)ことが一般的だが、「雨降」ブランド初の酒は精米歩合90%にチャレンジした。
杜氏の精妙な技巧と硬水との相性が相まって、味わいは深く香りは高く、それでいて専門家の誰もが驚くほど雑味なく仕上がった、吉川醸造の自信作だ。
日本酒文化を衰退させたくない、そんな熱い想いが伝わってくる新ブランドの3種の日本酒は、吉川醸造内の販売所もしくはオンラインストアで購入できる。
自然と蔵人の匠が作り上げた慈雨を味わってみたい。
吉川醸造(きっかわじょうぞう)
オンラインストア:https://kikkawa-jozo.com/
(冨田格)